製造業のデザインレビューに準備すべき大きな2つの情報共有

組立の工程設計には部品の組立順序の情報化によりデザインレビューの価値が出る

設計とのデザインレビューの際に、生産側の視点には生産の加工工程の順序がある。特に多くの部品点数を扱う工程である組立にはこの順序は重要なチェックポイントである。組立生産ラインの部品組立順序は、知識としては複雑な要素を考慮した結果として決定されているものである。その要素と考え方は外部からは想像できないものとなっている。企業によっても異なるものである。これらの要素と考え方はどこから見つけることができるかを説明していく。

 製品の設計者は機能をどのような理屈によって、その部品構造をどうすべきかを考える。この時に、組立の結合構造を考え、それによって、設計的な組立順序が決定される。この決定プロセスは大変重要であり、この順序を決定することになる結合構造や部品分割の範囲に対して生産側が生産ラインの効率性の観点から適切な意見を述べる必要がある。
 
 実はこのプロセスが機能していないものづくり企業が結構多くあるのである。このような企業は当然後日に生産性問題により、設計変更が多く発生し、しかも、設計はほとんど終了まじかでの設計変更であるために、設計的なコストアップと品質の信頼性についての不安を持つような対応可能な範囲での設計変更となってしまう。このことが問題なのである。設計者も納得した最良の構造にならないことを実施することになるのである。

加工工程の工程能力の共有化もデザインレビューには必須である。

 部品組立順序の他にも、品質を守るための加工精度とそれを実現するための方法なども一緒にデジタルレビューの段階で検討されなければならない。このような検討を行った結果として製品の構造が決定されるのである。したがって、製品の横並び構造が過去から整理されていれば、良否の判断と根拠も社内での合意が取りやすくなることは想像できると思う。

後の人の為に、当事者がどのような技術や知識を残せるかを考えて仕事をすること。

 人の仕事は結論だけが記録される。それも、ある一面的な範囲の中で議論されやすい。エンジニアの仕事は、このような習慣の中から進歩していないのではなかろうか。何年も何年も、なぜこのような問題に対して、手法が発見されないのであろうか。人は自分のためではなく、後世の人のために、何を残せるかをいつも考えなければいけない。企業の中の知的創造においても、同じことなであるが、残念ながら、そのような習慣にはなっていない企業が見受けられる。

 それは私達の考える方法についての興味や関心の無さにあるように思う。日本には多くのものづくり企業が存在している。考える方法についての出版物もあまり見たことがない。50年間くらい進歩が無いように思うのは私だけではないだろう。知的生産の技術に書かれていること以上の手法を是非教えていただきたいものだ。

製造業のデザインレビューには製品構造の横並び比較システムが必要である。

製造業のデザインレビューで成功する為には

デザインレビューはどんな観点で問題意識を持つかということは個人によって違いがあることを否めない。個人が保有した経験差が顕著にあらわれるものである。問題点はなぜ、そのことが問題であるのかということを説明し合うと差が良く分かるものである。製品開発におけデザインレビューをより継続的な共通の判断に持ち込むためには、製品の構造比較を整備する必要がある。

 製品のデザインレビューを行う生産側の担当の頭には何が固定概念としてあるのかを知っていなければならない。それは、製品を生産する予定の生産ラインの条件が頭にあるはずである。確かにその製品検討は、その製品をそのライン投入する為の仕事であり、その仕事をするように命令を受けて参加しているのであり、仕方がないことである。

 しかし、仮に、他にも生産ラインがあり、違う製品もあるならば、自分が気づいた問題点は、企業の共通の問題なのか、それとも担当する生産ラインの固有の問題点であるかを意識しなければならない。複数の生産ラインを保有する企業では、このような生産ライン固有の問題点だけをデザインレビューで行う傾向がある。
 

製造業は部品種類抑制し、構造の種類によるデザインレビューでの判断を複雑化しないこと


 企業の中でもう一つの問題は部品の種類増加である。部品種類増加は、生産の複雑化だけではなく、製品の交換パーツのサービス維持など、長期にその加工のために型がどんどん増えていく。置き場に困りスタッカークレーンなどを設置するならば、これは何かおかしいなと思わなければならない。

 製品の構成部品に似て非なる部品がどんどん増えてしまうのは、1つには、設計者の共通化の意識の不足もあれば、2つには、生産側の問題点の認識が固有の生産ラインのことだけを考えていることにもよって、部品の種類が増加していることも承知すべきことである。

 設計は特定の製品を長期に担当することもあり、その製品については熟知することになる。しかし、他の製品はよく分からないということになる。

 生産側は、多品種生産が通例であれば、いくつもの製品の構造を理解する必要があり、製品構造に関する知識は設計者よりも種類については良く知り得る立場になる。

 このように知り得る知識の範囲が縦と横のようの大きく異なる組織が、共通の意識を持って製品の設計が行うことができなければ、企業内に無駄な部品種類を増加させることになってしまうという事を理解しなければならない。

製品構造の横並び比較システムで構造検討を正しく行う

 このことを解決するためには、製品の横並び比較表を整備することが良い。企業内の製品を、1つの製品タイプ内の全製品を主たる構成部品ごとに横並び比較が行えるようにビジュアルに整理することが大事である。横軸は製品のバリエーションであり,縦軸は主たる構成部品が並ぶ。このセルに部品の構造をビジュアルに登録するのである。そして、この表に対して、製品が追加されるたびに横並び列を増やしていけば良いのである。
 

このようにすることで過去の製品の構造知識から最新製品の構造知識を誰もが知ることのできる環境が整うことになるのである。製品開発における知識の記録方式には、以上のような比較が可能にならなければ、単にコンピュータにデータをためるだけのシステムになってしまうだろう。

知識管理システムはものづくりプラットフォームへ

知識管理システムの機能

知識管理システムの業務への活用は2つの機能を対象とすることが必要である。1つは企業での標準化を推進する機能と2つ目は実際の設計や生産などの実務を実施する機能である。標準化を推進する機能は組織単位に標準化のグループを設け、その組織に関する技術の標準化を推進することが多い。この組織単位に設置された標準化グループはそれぞれが知識管理システムのユーザとして標準化を推進することとなる。これにより、自組織の個別最適な標準化ではなく全体最適な標準化を実現することができる。


 また、各実務の実施機能は実務における個別最適ではなく、各実務においても組織を横断的に捉えた全体最適判断を行うために、それぞれの組織が知識管理システムのユーザとなることになります。


 この全社的な運用を行うには、マスターデータである言葉のマスターの維持が重要である。言葉の全体管理を担う事務局とその言葉の承認を判断する検討ワーキングが継続的に運営されなければならない。一見、大変であるように思えるが、新規に承認すべき言葉は同じような製品を繰り返し開発生産する企業では多く発生しない。最初にこのマスターを登録し、整理することだけで多くは解決されるはずである。日ごろ怠っていることにより、言葉の矛盾や分類のあいまい性からの無駄な時間を考えれば圧倒的な効率化となるはずである。


 例えば海外とのコミュニケーションにも多いに有意義なことである。技術用語辞典を作成していることと同じであり、そのメンテナンス機能を持ったシステム化であると理解すればよい。この事から、言葉マスターの登録機能には、最低限、組織単位に使われる言葉の登録機能が必要である。そうでなければ、膨大な言葉の選択が組織の実務者に負担となるからである。


 また、組織単位に登録されたものの中から、類似した言葉を検索し、その類似した言葉群を一つの標準の言葉として扱う機能が必要である。これは、ユーザは良く使う簡略語を持ってコミュニケーションし、標準の言葉を正確に話しながら(記述しながら)コミュニケーションを行っていないためである。つまり、システムに対して、簡略語を入力(選択)しても、システムでは標準の言葉として記憶されるようにするべきである。また、言葉のマスターは技術、管理の2つの分類にて言葉の区分がなされていることも必要である。更に、言葉の見直しにおいては、標準の言葉を修正できるようにすべきである。


 これらの機能を用いて、標準化の推進業務が円滑に行われるように配慮している。
 実際の実務推進での業務活用方法は、まず、実際の製品開発にて知識管理システムを使うことである。要件書やチェックリストをまとめて知識管理システムに登録することは言葉のマスターといった体系的な整理がされていない限りは推奨できない。


 実際の製品開発にてコツコツと言葉のマスターの体系的分類の中に知識を蓄積していくことがベストな方法である。製品開発の段階では具体的な事実と共に、意思決定をする必要があり、その為に、具体的な事柄の1つひとつを過去の知識を整理しつつ業務を進めるからである。その為に、知識管理システムに蓄積しやすい業務となっている。と言うよりも、知識管理システムは製品開発段階で活用する前提で機能開発をしたものである。


 1つの製品を開発から量産、サービスまで企業内にて運用が進むと、その蓄積された知識がどのように関係しているかを俯瞰できるようになる。この知識を参考に次の製品開発に知識管理システムを活用する。その時に、既に蓄積された知識や言葉のマスターとどこが同じであり、どこが異なるかをユーザは自然と意識することができる。その時に、数々の気づきが得られ、その結果を蓄積することでより広く、深い知識を知ることができることを確信するはずである。


 製品開発のマネージャは開発日程や原価、品質などの視点で設計を判断する必要がある。今日、3DCADシステムが運用され、このような判断をどのように実施すべきか迷っている企業も多い。


 知識管理システムは標準の知識に比較して良否を判断することを基本コンセプトとしている。そのためには知識管理システム内で、標準の知識と実際の設計の2つが扱えることが必要である。この両者を比較する手法とその比較した結果を共有することが機能として織り込まれている。


 まず、比較する手法は3DCADモデルへの特徴点記述という方法を用いている。ここで特徴点とは人が気づきを持った対象となる3DCADモデルにおけるx,y,z座標である。他者からどのようなことに人はどのような判断をしているかを見える化する方法である。それには、あらゆる対象がその特徴点記述の対象となりえる。そこで、特徴点の対象を点、線、面、部位など形状だけでなく対象を区分する言葉を選択する方法を採用している。これによりx,y,z座標と区分をセットにした単位を比較対象の単位と定義する。


 比較した結果を共有する方法は3DCADモデルのひとつの特徴点に対して、複数の組織がその知識を記述できることと、標準の知識と実際の設計の比較した技術判断の結果を保留点、問題点、承認点などの区分を登録することで、エンジニアがどのような判断をしているかを他者やマネージャに見える化する方法を保有している。エンジニアは知識がないことは判断ができない。


 従って、知識がないことは保留点とされる。知識があることは問題点か承認点のいずれかに判断される。判断に使われた知識は知識管理システムで記述できるので、知識があることと無いこと、技術判断の区分にマネージャは着目し、製品開発のマネージメントに活用することや、技術の進展をリードすることができるのである。

空間座標への知識の記録法により企業全体の知識共有の実現を

3DCADモデルであれは、そこに記述する知識はいくらでも記憶できる。たとえ、実際の生産ラインで知り得た知識であっても、3DCADモデルに知識を記述する方法とすることで、設計の知識と生産の知識が関係性を持って保有することができる。


 企業のIT化は全体最適を狙いつつも、結局個別システムになっている。それは、全体を捉えようとシステム設計しても、その途中で限界に直面し、システムを導入する企業も一度に全体を実施適用せずにスモールスタートで実施し、効果を見つつ成長をとの安易さで全体最適を真剣に検討することを避けて考えているからである。ここで、全体最適とは何か。どうなれば全体最適と言えるのか。そのことを研究することなく、単に全体最適と言っているだけではないのかと思えてならない。


 全体最適のシステムとはものづくり企業において、技術のトレードオフ検討ができるシステムを意味するものと考えている。自動で結論を出すシステムではない、最適化機能を含めるとしても、答えを出すのはあくまでも人間である。その為に、全体最適のシステムであることの最低条件はものづくり企業の知識をためることのできるシステムであると考えている。


 知識の対象はものづくり企業全体である。企業全体の知識をためる仕組みであれば、一部の部署から知識をためるシステムを活用しても全体に広がるものであるので全体最適のシステムをスモールスタートさせていることとなる。


 スモールスタートとはコストが安いやり方、一部の部署だけのシステム、一部の機能だけのシステムを言うものではなく、全体最適のシステムを設計した結果として、スモールな組織、機能にてその全体最適システムを立ち上げることをスモールスタートと言うべきである。


 スモールと言う以上はラージとは何かを捉えていなければ、意味のない逃げの表現である。このようなことを説明することすらできない製造業やIT企業は生き残ることはできないだろう。ものづくりのIT化は日本人しかできないと思っている。そこに閉塞感のあるIT産業の突破口がある。


 また、そのITを活用する日本のものづくり企業の突破口があるはずだ。IEのIT化と言うことを以前から提案している。この2つの産業が共に進化すること、共に成長することと期待している。

知識体系の言葉マスターによるものづくり知識の記録法

ものづくりの事例を上位概念の言葉マスターでまとめる

 
 どんなに多くの事例を述べられても、上位概念なくしては、知識の活用や転用ができない。その為に、知識の蓄積には言葉マスターを用いた上位概念の記述ができることが必要なのである。インターネット世代がものづくりの仕事をブレークスルーすること、イノベーション的なものをグローバルに提供できることの基盤として、言葉マスターからなるものづくり知識の体系的な蓄積を武器に企業を牽引することを期待している。

競争に打ち勝つ開発力は技術の蓄積から


 今、改善だけではグローバルな競争下では勝つことができない。改革するスピードが生き残りの条件である。ものづくり企業は今行うべき改革とは、圧倒的なスピードと効率性で新製品の開発を行うことだと言える。


 時間とマンパワーに依存した労働集約的なビジネススタイルではなく、少人数で超短期に製品の開発を行う仕組みを持ち得ていることが必要である。アウトソーソングを無くして、自社完結型ですべての構成品と製品が生産できる力を持つべきである。その上で、コアコンピタンスを明確化しなおすことである。


 ものづくり企業においてコアコンピタンスは新製品の開発力である。開発力とは単なる設計だけではなく、どのような製品をどの地域でどのようなサプライヤから調達することがQCDの最適化となるかを決定できる力を持つことで、それがこれからの製造業のコアコンピタンスになると考えている。そのために、IT技術による技術の蓄積は必要条件である。これを持たないものづくり企業は生き残ることはできないだろう。

技術の蓄積の基本方式について


 では、知識はどのような方法で記述する方法が良いのであろうか。巷には知識の記録方法として、ドキュメントをそのままデジタル化し、そのドキュメントに検索の為のタグを付与するシステム、ビデオ撮影し、動画で作業方法を記録するシステムなどが紹介されている。


 しかし、これらのシステムには上位概念が定義できない。また、言葉のマスターという機能がない。したがって、知識を記録することはできないシステムと言える。知識はテキスト文書を読んだだけでは、理解ができないために動画を用いている。


 つまり、知識を理解するには現場が必要である。ものづくりの現場とはそこに設計図や生産ラインや部品がある場所である。このような現場にいつでも行けるわけではないので、現場を仮想的に表示することが必要となる。そこで、知識を記録する現場として3DCADモデルを用いた方法にその実現性がある。

3DCADを用いた技術知識の蓄積方法は弊社の特許となっています。詳しくは、こちらからお読みください。


 今日、設計も設備も生産ラインも部品も3DCADモデルで設計される時代である。その3DCADモデルどおりに現物の物が存在している。この仮想的な現場である3DCADモデルに言葉マスターを用いた知識の記述をすることは、コンピュータの容量以外にその記憶限界はなく、優秀な知識記憶媒体といえる。映像はその仮想的な3DCADモデルのアニメーションである。5Gに期待している。また、現場の音は予測シミュレーションで生成する時代も到来するであろう。


 いずれにしても、人は具体的なものを見ないとその知識が記憶できない動物であると思う。子供が段々と物を理解できるプロセスはなんとなく同じものであるということを身につけることにより、全く同じ形(形状)でなくても特徴が同じであれば、犬か猫とを理解をすることからも分かる。私は脳科学の知識はないが、知識をためる形は、子供が知識を身に付ける方法にヒントがあると考えている。その方法が、一番人が理解しやすく知識を成長させるベストな方法であるのではないだろうか。