製造業での技術の蓄積検索の問題点と解決法

創造性に使われるKJ法のプロセスを残せていない。

商業用途の検索は仕事には使えない。時間の無駄であるが、他に代替方法がないから、やむを得ず使うしかない。使わないよりも探す時間は短くて済むからだ。それでも、別な方法がないのだろうか?といつも思っていた。
 昔、川喜田二郎先生が考案したKJ法であるが、企業の中でも、今でも使われている。一つのテーマについて、多くの意見を出し合い、その結果をいくつかのグループに層別し、テーマについての結論を見つける手法である。
 この結果は報告記録されるが、そのカードは輪ゴムで束ね、いつしか捨てられてしまう。そして、いつかまた同じようなテーマを違うメンバーがKJ法で行うことになる。思い出す行為は何回も繰り返えされるのである。このストレスは大変なものだ。
 環境の変化や技術の変化で、同じテーマであっても、異なる結論がまとめられることもある。しかし、記入したカードの8割が過去と同じであり、10人が半日かけて40時間の工数を使ったならば、過去のカードを利用できる場合には、10人で1時間で結論が出せる可能性がある。
 チームでアイデアを出し合い際でも、最後に残った結果以外は破棄されてしまう。
 或いは、原価低減活動におけるものづくりのコストを減らすアイデアも、効果の大きなアイデアだけが採用されて、他のアイデアは捨てられてしまう。原価低減活動は、実際のものを見ながら行うことが多い。この場合、形やサイズを変更すれば安くると分かっても、生産設備の改造ができないので、そのアイデアは却下となることもある。

特徴点記述法のメリット


 ものができてしまった後の原価低減は難しい。本来、この原価低減アイデアは、次の製品設計で織り込まなければいけないアイデアである。しかし、チームが異なる、しばらく開発の計画がなければ、忘れ去られてしまう。このようなせっかくのアイデアが企業の中で継承されないことが多いと思う。
 このようなメモはどこに記録できるだろうか?PCでテキスト作成ツールでメモを書いても、社内で共有は難しい。ファイルの置き場のフォルダ階層を、探しすのは面倒であるから守られない。個人のフォルダにファイルを保存するくらいしかやらないだろう。
 どこに置かれていても、原価低減アイデアが繭の糸のように引き出すことができなければならない。このようなことが可能になるのが、特徴点記録法なのである。

ものづくり知識の記録を製造業の重要な資産とする為の方法について

人は目に見えたことから思考する。

人はどのように物事を考えるのか?目で対象を観察することだ。対象は書類やディスプレー、スマホ、物、景色なんでも対象だ。
その対象に対して、考える。これをメモすることが重要。
 どんなドキュメントを如何なるフォーマットで作成しても、見ている目は点の集合の像である。網膜に.pdfなどの拡張子は無関係。
したがって、スマホ、ディスプレーのスナップショットを撮ることが、見ている目の象に近いはずだ。見ている目は、100ページの文書を同時に見ているわけでなく、欲しい対象はその見ている対象の部分でしかない。残りの99%はその考えに無用である。
 人は、複数の対象を見た結果として、一つの考えを捉えるものと思う。
 それは同じ文書内の複数であるし、あるいはそれぞれ別な文書の複数である。このことが記録できれば良いのである。人の社会における仕事とは何かということも考えなければならない。
 何かの目的の為に、どのように考えて、どのような結論を出したかを、関係者間で意見を整えることとなるのでは無いか。関係者が企業の中だけであったり、他の企業の人であることにおいても、同じである。この関係者間の利益が双方で合致できれば、話はまとまるので、その合致点を考えることをするのだと思う。

非定型業務には特徴点記述法が必要となる。

このようなことが文書になっているのである。つまり、文書は使い回しができることは本当の仕事には少ないのである。本当の仕事とは定型的でないことを言う。
 では、ファイルと言う単位はなんだ?ただ、コンピュータが管理しやすい単位でしかない。何十年もだ。人が使いやすい単位にコンピュータが合わせていく動きが何故無いのか?更に、ホルダーとはなんだろう?ネットサーフィンというだけでなく、PCの中での物探しに明け暮れしている自分の時間を無駄だと思わないのは何故なんだろうか?紙の場合はバインダーの整理を中を見ながら行なって、バインダーの名称も変更することをじていたと思う。
 そこで、特徴点という有利なことが出てくる。
目で見たことを関係づけながら、その文脈を記録する手法である。
 これは、ユーザの一番表面に機能が存在していれば良い。特徴点→目(絵)→保存(特徴点+絵)の順である。
「特徴点+絵」が人に意味のある単位であると思う。
 次に必要なことは、この「特徴点+絵」がいっぱいある中で、自分の欲しい「特徴点+絵」をどのように見つけるかについてである。
 この「特徴点+絵」がどのような分野についてのもであるかは、個人、組織、企業、地域によって様々である。年齢によっても違いがある。
 そのような中で、共通の概念としては、グローバルな分類によらざるを得ないが、細かすぎる分類は、逆に、ホルダー階層を繰り返しパズルのと同じことになってしまう。
 川喜田二郎先生がフィールドサイエンスと呼んだ野外科学を今日でも人は続けているのだと思う。見ることは本当に大事なことで、それを研究室に持ち帰リ、科学的なアプローチをしたい。そして、川喜田先生のKJ法をIT技術で発展させたいと思います。

製造業の働き方改革は知識の共有化から進めることが近道である

属人的な業務スタイルは人間関係がなければ知識は個人持ちになるものである。

エンジニアリングにおいて、属人的である事は今も手を打てていない。これではいつまでも個人の保有するノウハウこそが、価値であると言うことになってしまう。ノウハウを活かして、何をするのか、どんな問題を解決したのかが価値である。技術者の人事査定を行った経験からすれば、ノウハウがある=ある仕事を経験しただけでしかない方は、ノウハウを持っていない。ノウハウは具体的なことを経験した上で、一般化されて知識になっていなければならないそして、そのノウハウを積極的に他者に語らなければならない。自らの内に閉じ込めていては、社会に貢献できない。
 つまり、何かを解決することができたならば、その過程で、いくつかの問題や壁に直面したはずである。その時に、どのように考えて、解決してきたかを他者に伝達することが大事である。この問題解決力が成果の次に評価されなければならない。どんな難しい問題を解決できたのかを知らなけれならない。ノウハウは、このようなプロセスを経て、更に洗練されたノウハウに昇華される。ものの本を読んだだけでは、知識を知っただけでしかなく、ノウハウになるには実行して初めて、それは獲得できることなのである。実務に踏み込んでいかない管理者、現場を見ない管理者では、このようなノウハウの進化を進める事はできない。

知識の共有化はマネージャの仕事。積極的に共有する風土が必要となる。


 さて、これらのノウハウを伝えるには、できるだけ考えたことや文書を保存しながら仕事を進めるのが良い。プロジェクトが終わってからの振り返りでは、脳裏から経験したことの多くが忘れられてしまうからだ。毎日、何らかの事を考えて、人とも会い、現場を見て仕事をするのであるから、それらを途中で良いので状態を記録し、次は何をすべきかを付け加えながら進めるべきだ。例えば1週間経過して、その週の振り返りを行い、反省点を加えて、次回はこのようにすべきだをメモしておくことだ。この中に自分では解決できない従来からの課題や社会の変化により考え方を見直すべき点を刻み込むようにする。このように仕事を行えば、しぜんと協調性が育ち、リーダーシップも発揮しやすくなるはずだ。

派遣社員、ゲストエンジニアにも知識を共有することが必要である。

一方、もう30年くらい経過したことの1つに派遣社員が企業の戦力となっていることがあげられる。その質的な変化は、昔は定型的な工数消費的な仕事であったが、今では、設計や企画など、アイデアまでも外部依存している。ここまでの外部依存が常態化すると、正社員には管理業務くらいしかなくなってしまう。本当にこれで良いのだろうか?派遣社員の方がやられた仕事もノウハウを蓄積するシステムに共有されなければならない。このようなことが企業で行われていないならば残念なことである。

 他者にノウハウを伝達するには、このような仕事のプロセスに入り込んで細部を説明する必要がある。その時に文書だけでなく、図や動画を用いて説明しないと誤解が生まれやすい。文書や図や動画を関係付けて適切な順序で、伝えたい事を説明できるコンテンツを保有しなければならない。そして、仕事の中で起こった問題点とその対策も説明し、コンテンツに記載された事柄のWhyを伝達するように修正されていかなければ企業の生きているノウハウは洗練されない。

知識の共有化とセキュリティが担保できる情報システムを構築しなければ、製造業の生産性を向上しない。

知識の記録をすることで教育から学ぶ方法へ。ビックデータ活用時代の教育のあり方を考えたい。

教科書はもういらない時代へ

教科書を読んだだけでは理解されないことがある。人に聞いてもわからないことがある。人それぞれに理解の深さが異なるものである。学校では知識を教科書から得る授業が主体であるからだ。学びの方法は、この経験を通して個々人が身につけていくことになっている。学びの方法を身につけられていないことは、現代社会においては調和的建設的な生き方が難しいのではと考えている。
 リテラシーという言葉が使われる時代になった。新しく出現した概念やものについての理解や知識があること言うが、社会人となってから出現してきたことに、どのようにリテラシーを身につけていけば良いのだろうか。それは知的好奇心を持ち続けるしか動機づけはない。今、従事している仕事のはリテラシーという部分が存在していないこともあるだろう。世の中の情報を自分の動機づけを維持しながら興味関心を維持する事は容易な事ではない。ノーベル賞を受賞した方々は、きっとライフワークとして研究をされたはずだ。
 しかし、そのような研究的なことをリテラシーとは言わない。これから普通の常識として広がっていくもの事に対する、平均点に到達していない知識不足のことだ。私はリテラシーという単語が好きではない。今、世の中で使われているITリテラシーは、単にパソコンが操作できることの程度の使い方である。そんなことをわざわざあかるかどうかを横文字でいう必要はない。横文字にして、あたかも新概念であるかのように思わせて誤魔化されていないだろうか?
 操作の方法を知ったところで、それは作業方法を知っただけで、考えることがうまくなったこととは程遠い。学校での教育も、考える授業であるべきだ。考え方はいくつもあり、正解がない、あるいは、いくつもの解き方があるということを知り、その思考過程の中で、学びとは何か、学び方を身につけて欲しいものだ。きっとこの姿勢は永遠に続けられるしかない。学ぶ対象は宇宙のように膨大で膨張していくのであるから。

学び方を発見する教育へ

 子供の頃から、知識と学びは違うことであるを教えないといけない。頭でっかちと呼ばれる人は知識はあるが、自分で考えることのできない人のことをいう。現代社会において、この頭でっかちの火星人が増えているように思う。具体的な事象の上に学びが得られるはずが、事象を読んだだけでは分かった気になるのでは困る。インターネットにある文書をコピペして、いかにも自分の考えたことだと報告する社員がいる。インターネットの無い時代では、それはできなかった。ITリテラシーはあるが、何か大切な教育が欠けているのでは無いかと思う。

 学校教育にパソコンが入っている。学びという点でそのコンテンツは単に本のデジタル化に留まっていないだろうか?これはまた同じ頭でっかちを作ろうとしているのではないか?教科書を読んでも学びが得られない。このことに対する対策がパソコンを用いた教育の中で行われなければならない。このように問題意識をもって学習教材を考えている。

特徴点記録法により知識を自由に獲得できる21世紀の教科書を作りたい。

教育は事例の理解をたくさん行い、関連する事例に展開できる機能が必要である。それは、検索に依存する探すことを行う必要のないやり方でなければ、思考がそがれてしまう。知りたいと思えば、どんどんと広がっていくことのできる機能が必要である。習得する順番は規程されていても、その範囲は自由に広げられるようになっているべきだと思う。
 このようなことを実現しようとするならば、単に本をデジタル化しただけでは不可能であることは自明である。その中で何を思い、どのように考えたかを書き込む機能が必要である。そして、そのことを他者と共有して、同じ知的好奇心をもつ人達と議論ができる機能が必要である。これらの為には、お互いに知っていることを参照登録でき、その結果が絵本のように表示されなければならない。このような機能を実現する際にも、特徴点記述法は有効である。そして何人も同じ知識獲得の環境を平等に享受できなければならない。

知識の記録ができる方法の説明はこちらから。

製造業における写真の活用と知識の蓄積の例

デザイン性や部品の構造などの現物写真の蓄積

写真の整理方法は大変重要だと思う。見た時をそのまま、記録するからである。動画も同じく重要である。月日が流れると撮影した時とは様子が変化している。欲しい写真を一発で見つけることができなければならない。写真を撮影した時に感じたことがあるから、その風景や対象を選んだはずである。しかし、私達は写真という絵だけしか、その時に記録していない。これが問題である。

 撮影者が思い感じたことを明確に記録することは、後の考えの整理に役立つ。そこで写真についても、そのイメージ図に対し、どこが良かったのかなどを特徴点を書き込んで、感じたことを記録する。それは、撮影以後、どのタイミングでも、改めての感想も含めて、1枚の写真になるべくたくさん特徴点を登録する。

特徴点についての説明はこちらからご覧ください


 写真には、山や川、森、草花、人、動物、乗り物、雲もあれば、家の中にある家具、照明、インテリアなどもある。一度、旅行に出かけるといろいろな対象を写真で撮影することになる。例えば、10年間、暇を見つけてカメラを持って出歩いたとすると、撮影した写真をグループ分けして整理したくなる。時間軸だけで分類されるのでは知的好奇心が収まらない。自分の思いや感動などで、グループ分けすると、自分の本当の興味に気付けるかも知れない。

気づきの記録は写真と一体化した特徴点記述法が優れている


 また、ある写真の特徴点と他の特徴点との関係に親子関係や参照関係が見つかるかも知れない。かつて南方熊楠先生の研究はこのような地道の整理の上になし得た研究成果であった。今日のIT技術は、曖昧な推定だけで行うことだけでは不安があり、もっと確定的情報が必要であり、人の知識を少しだけでもイメージ図に加えておくだけで、新しい検索方法を開発できるのである。使う人の意図に合わせた検索結果が必要なのであり、それによってファイルサーバに眠ったダークデータを掘り起こして、新しい着眼点が発見できるようになる。もの書きをするクリエイタには最良な方式である。 

 また、ものを対象として撮影した場合、そのものからの気づきには、周囲にあるものや人など写っている絵とその位置関係から受け取るものもある。したがって、時刻の経過、年月の経過により、撮影した対象の変化もあるが、周囲の変化もあるものである。写真は対象のものを周囲のものや人の数や位置関係やその他の状況の組合せの結果として構成されており、その結果としての考えや気づきや感動などを作り出していることも多いのである。
 写真が工場内、店舗内、倉庫などの場合には、生産管理上の有益なデータとなる。それは、その写真に写っている物が、同時刻に同じ場所に存在したことを示していることになる。写真の中に何があるかが分かれば、それらが計画に対して、正しいのかどうかを判断できるようになる。

製品の検査工程での活用方法

 また、製品の検査は、まだまだ人による目視であることが多いが、検査にて写真を撮ることを併用すると、人の判断と写真の比較により、判断のミスが起こりやすい事例を蓄積できる。その対策により検査の信頼性を向上させることにもつながるはずだ。特徴点として事前に、確認すべきポイントをスマートグラスなどで、視野内に情報と目の前の物を重ねて見ることで、人の判断を支援するシステムも作ることができる。目で捉えた対象が人の思考の出発点であり、見た対象と考えたことを一体で蓄積することが既存の文書などのファイルを活用する方法であると考えている。