製造業のコミュニケーション基盤としてのCKWEB2開発の背景

メモの方法の進化と停滞

メモの方法がノートからカードシステムへ。ノートからパソコンに変化してきた。この間に忘れ去られた思想がある。それはアイデアをどのように成長させるかについての工夫と機能である。 
 
 PCへの記録には、アプリケーションと呼ぶ、やっかいなものが介在している。ノートならなかったこの制約。ましてやカードシステムになり切れないソフトウエアなのである。

 このようなことで創造力が発揮されたり、成長させたりできるとは思えない。メモの組み直しができないのである。これしかないように強制されたこれらのことに反発してしまうのは私だけだろうか?

メモの置き場が分散化される乱立するクラウドサービス

 更にクラウドサービスが拍車をかけている。メモの保存先を勝手に変えてしまうのである。私は昔からMacが好きである。しかし、仕事はWindowsである。仕事がWindowsになってしまうと面倒で仕方ない。どちらでも良いようになぜならないのだろうか。本来共通性と守るべきことが無視され、システムの技術的競争にユーザーの利便性を低下させている。キャビネットである保管先まで、クラウドに自動で分けられ、アイデアを整理する上位概念での分類ができなくなっている。ローカルなPCや記録装置にデータを置くのは外出時に仕事ができない。

 みなさんはどうでしょうか。個人の知的好奇心の結果が仕事の成果にもつながるようにならねばいけないと思うのであるが、仕事と個人とで使うアプリが異なるのは困るのである。
個人の興味と仕事の選択をする人が増えている時代となってきて、そうならねば人生が面白くないはずだ。

弊社がCKWEB2を開発した理由がここにある

 書いている間に忘れそうで必死に書く。湧き出る水を飲まなければ溢れ出す心配。
個人と仕事をツールで分けられたら、思考が二重になってしまう。
メモには文書だけでなく、写真や絵や動画やいろいろなデジタルデータがある。それらを『くる』必要があるのである。

 いろいろな単発メモを検索して新しい発見ができなければ、蓄積したデータが価値をなさない。それを検索でとシステム屋は言うだろうが、検索結果が意図しないことを多く含んでいたならば、価値は半減する。必要十分な結果を出現させる方法を考えて欲しいものだ。それはシステム屋という職業の範囲を超えているのではないだろうか。

 記録や蓄積するだけではなく、データを活用する事を意識するならば、記録の方法から考え直さないといけない。デジタルトランスフォーメーションDXは企業の中での問題以前に、個人のDXが行われないと生産性は向上しないように思う。

現在のメモアプリ(知識の記録方式)の問題点

システム手帳を使い出して何十年も経過し、携帯のメモアプリやスマホにメモを書くことも、かなり早くから始めてきたのであるが、未だにシステム手帳も使っている。システム手帳の使う場面は、会議の時だけになっている。どうしても、キーボードを打ちながらでは、会議に集中できないからがその理由である。ブラインドタッチでも、会議は絶対に紙にメモを書くことにしている。そもそも、私は、会議中にパソコンに打ち込んでいながら、仕事をするのは、考えることに集中せず相手に失礼だと思っているのである。

 では、手書きメモをどうしているかと言えば、改めてデジタルのデータにすることはしていない。つまり、システム手帳は会議録専用にしているのである。これが一番自分には効率的だと思っている。

 さて、スマホに記録したメモはどう扱っているのかと言えば、これも用途に分けている。プレゼンのネタを思いついた時には、keynoteにメモして、それを見ながら、別のkeynoteファイルにプレゼンを記載している。投稿や出版のネタは、pages にメモしている。Windowsなら、PowerPointとword ソフトである。


 
 numbersなどの表アプリは使っていない。表は思考のプロセスの随分と後の手続きに必要にはなるだけのことであるからだ。その他のメモは、メモアプリを使っている。自分なりに、メモの種別によって使うアプリを変えている。ゆくゆく絵を挿入するからkeynoteへ、メモを成長させて文章化していくものはpagesへ、断片的な自分だけの記録はメモを使うのが一番しっくりしている。本当は、どのように種別でも、一つのアプリで済ませたいのであるが、それができないのが歯痒い。

 このように、その後の発展活用用途に分けてメモの場所を変えてはいるが、どうしても、アプリを超えてメモを再整理する必要がある。それも結構な頻度で行っている。結局、カードシステムのようなことをパソコンの上で、行っているのである。これが大変面倒なのである。記録することに偏り、データを使うことへの機能開発が不足している。カードシステムよりも良い点は、コピペすれば、オリジナルな場所のメモは消えていない点である。すると、このようにアプリを超えたメモをどんなアプリに集合させるのが良いのかを探す必要があり、いろいろ試しているが推薦できるものがない。

 そもそも、全てを行えるアプリを開発していただけないかと願うばかりである。パソコンが生まれて以来、これらのアプリを受け入れ、その上で仕事をしてきてしまったことから転換することは容易でない。仕事の細部手続きの中に、アプリが特定され埋め込まれてしまっている。だから、そのような統一的アプリにチャレンジする人がいないのかもしれない。

 人が考えることを行う場合、紙と鉛筆が基本であった。そこに、アプリと言う機能を限定した考えを持ち込んでしまった上に機能の競争になり、多種多様なアプリ乱立の状態になってしまったのである。私は、紙のカードシステムの軽快性と可視化性の上にパソコンの記憶力と検索力が知識の記録方式の基本であると考えている。その上で、枝葉である機能を作り直してみたいと思っている。

製造業のデザインレビューに準備すべき大きな2つの情報共有

組立の工程設計には部品の組立順序の情報化によりデザインレビューの価値が出る

設計とのデザインレビューの際に、生産側の視点には生産の加工工程の順序がある。特に多くの部品点数を扱う工程である組立にはこの順序は重要なチェックポイントである。組立生産ラインの部品組立順序は、知識としては複雑な要素を考慮した結果として決定されているものである。その要素と考え方は外部からは想像できないものとなっている。企業によっても異なるものである。これらの要素と考え方はどこから見つけることができるかを説明していく。

 製品の設計者は機能をどのような理屈によって、その部品構造をどうすべきかを考える。この時に、組立の結合構造を考え、それによって、設計的な組立順序が決定される。この決定プロセスは大変重要であり、この順序を決定することになる結合構造や部品分割の範囲に対して生産側が生産ラインの効率性の観点から適切な意見を述べる必要がある。
 
 実はこのプロセスが機能していないものづくり企業が結構多くあるのである。このような企業は当然後日に生産性問題により、設計変更が多く発生し、しかも、設計はほとんど終了まじかでの設計変更であるために、設計的なコストアップと品質の信頼性についての不安を持つような対応可能な範囲での設計変更となってしまう。このことが問題なのである。設計者も納得した最良の構造にならないことを実施することになるのである。

加工工程の工程能力の共有化もデザインレビューには必須である。

 部品組立順序の他にも、品質を守るための加工精度とそれを実現するための方法なども一緒にデジタルレビューの段階で検討されなければならない。このような検討を行った結果として製品の構造が決定されるのである。したがって、製品の横並び構造が過去から整理されていれば、良否の判断と根拠も社内での合意が取りやすくなることは想像できると思う。

後の人の為に、当事者がどのような技術や知識を残せるかを考えて仕事をすること。

 人の仕事は結論だけが記録される。それも、ある一面的な範囲の中で議論されやすい。エンジニアの仕事は、このような習慣の中から進歩していないのではなかろうか。何年も何年も、なぜこのような問題に対して、手法が発見されないのであろうか。人は自分のためではなく、後世の人のために、何を残せるかをいつも考えなければいけない。企業の中の知的創造においても、同じことなであるが、残念ながら、そのような習慣にはなっていない企業が見受けられる。

 それは私達の考える方法についての興味や関心の無さにあるように思う。日本には多くのものづくり企業が存在している。考える方法についての出版物もあまり見たことがない。50年間くらい進歩が無いように思うのは私だけではないだろう。知的生産の技術に書かれていること以上の手法を是非教えていただきたいものだ。

製造業のデザインレビューには製品構造の横並び比較システムが必要である。

製造業のデザインレビューで成功する為には

デザインレビューはどんな観点で問題意識を持つかということは個人によって違いがあることを否めない。個人が保有した経験差が顕著にあらわれるものである。問題点はなぜ、そのことが問題であるのかということを説明し合うと差が良く分かるものである。製品開発におけデザインレビューをより継続的な共通の判断に持ち込むためには、製品の構造比較を整備する必要がある。

 製品のデザインレビューを行う生産側の担当の頭には何が固定概念としてあるのかを知っていなければならない。それは、製品を生産する予定の生産ラインの条件が頭にあるはずである。確かにその製品検討は、その製品をそのライン投入する為の仕事であり、その仕事をするように命令を受けて参加しているのであり、仕方がないことである。

 しかし、仮に、他にも生産ラインがあり、違う製品もあるならば、自分が気づいた問題点は、企業の共通の問題なのか、それとも担当する生産ラインの固有の問題点であるかを意識しなければならない。複数の生産ラインを保有する企業では、このような生産ライン固有の問題点だけをデザインレビューで行う傾向がある。
 

製造業は部品種類抑制し、構造の種類によるデザインレビューでの判断を複雑化しないこと


 企業の中でもう一つの問題は部品の種類増加である。部品種類増加は、生産の複雑化だけではなく、製品の交換パーツのサービス維持など、長期にその加工のために型がどんどん増えていく。置き場に困りスタッカークレーンなどを設置するならば、これは何かおかしいなと思わなければならない。

 製品の構成部品に似て非なる部品がどんどん増えてしまうのは、1つには、設計者の共通化の意識の不足もあれば、2つには、生産側の問題点の認識が固有の生産ラインのことだけを考えていることにもよって、部品の種類が増加していることも承知すべきことである。

 設計は特定の製品を長期に担当することもあり、その製品については熟知することになる。しかし、他の製品はよく分からないということになる。

 生産側は、多品種生産が通例であれば、いくつもの製品の構造を理解する必要があり、製品構造に関する知識は設計者よりも種類については良く知り得る立場になる。

 このように知り得る知識の範囲が縦と横のようの大きく異なる組織が、共通の意識を持って製品の設計が行うことができなければ、企業内に無駄な部品種類を増加させることになってしまうという事を理解しなければならない。

製品構造の横並び比較システムで構造検討を正しく行う

 このことを解決するためには、製品の横並び比較表を整備することが良い。企業内の製品を、1つの製品タイプ内の全製品を主たる構成部品ごとに横並び比較が行えるようにビジュアルに整理することが大事である。横軸は製品のバリエーションであり,縦軸は主たる構成部品が並ぶ。このセルに部品の構造をビジュアルに登録するのである。そして、この表に対して、製品が追加されるたびに横並び列を増やしていけば良いのである。
 

このようにすることで過去の製品の構造知識から最新製品の構造知識を誰もが知ることのできる環境が整うことになるのである。製品開発における知識の記録方式には、以上のような比較が可能にならなければ、単にコンピュータにデータをためるだけのシステムになってしまうだろう。

知識管理システムはものづくりプラットフォームへ

知識管理システムの機能

知識管理システムの業務への活用は2つの機能を対象とすることが必要である。1つは企業での標準化を推進する機能と2つ目は実際の設計や生産などの実務を実施する機能である。標準化を推進する機能は組織単位に標準化のグループを設け、その組織に関する技術の標準化を推進することが多い。この組織単位に設置された標準化グループはそれぞれが知識管理システムのユーザとして標準化を推進することとなる。これにより、自組織の個別最適な標準化ではなく全体最適な標準化を実現することができる。


 また、各実務の実施機能は実務における個別最適ではなく、各実務においても組織を横断的に捉えた全体最適判断を行うために、それぞれの組織が知識管理システムのユーザとなることになります。


 この全社的な運用を行うには、マスターデータである言葉のマスターの維持が重要である。言葉の全体管理を担う事務局とその言葉の承認を判断する検討ワーキングが継続的に運営されなければならない。一見、大変であるように思えるが、新規に承認すべき言葉は同じような製品を繰り返し開発生産する企業では多く発生しない。最初にこのマスターを登録し、整理することだけで多くは解決されるはずである。日ごろ怠っていることにより、言葉の矛盾や分類のあいまい性からの無駄な時間を考えれば圧倒的な効率化となるはずである。


 例えば海外とのコミュニケーションにも多いに有意義なことである。技術用語辞典を作成していることと同じであり、そのメンテナンス機能を持ったシステム化であると理解すればよい。この事から、言葉マスターの登録機能には、最低限、組織単位に使われる言葉の登録機能が必要である。そうでなければ、膨大な言葉の選択が組織の実務者に負担となるからである。


 また、組織単位に登録されたものの中から、類似した言葉を検索し、その類似した言葉群を一つの標準の言葉として扱う機能が必要である。これは、ユーザは良く使う簡略語を持ってコミュニケーションし、標準の言葉を正確に話しながら(記述しながら)コミュニケーションを行っていないためである。つまり、システムに対して、簡略語を入力(選択)しても、システムでは標準の言葉として記憶されるようにするべきである。また、言葉のマスターは技術、管理の2つの分類にて言葉の区分がなされていることも必要である。更に、言葉の見直しにおいては、標準の言葉を修正できるようにすべきである。


 これらの機能を用いて、標準化の推進業務が円滑に行われるように配慮している。
 実際の実務推進での業務活用方法は、まず、実際の製品開発にて知識管理システムを使うことである。要件書やチェックリストをまとめて知識管理システムに登録することは言葉のマスターといった体系的な整理がされていない限りは推奨できない。


 実際の製品開発にてコツコツと言葉のマスターの体系的分類の中に知識を蓄積していくことがベストな方法である。製品開発の段階では具体的な事実と共に、意思決定をする必要があり、その為に、具体的な事柄の1つひとつを過去の知識を整理しつつ業務を進めるからである。その為に、知識管理システムに蓄積しやすい業務となっている。と言うよりも、知識管理システムは製品開発段階で活用する前提で機能開発をしたものである。


 1つの製品を開発から量産、サービスまで企業内にて運用が進むと、その蓄積された知識がどのように関係しているかを俯瞰できるようになる。この知識を参考に次の製品開発に知識管理システムを活用する。その時に、既に蓄積された知識や言葉のマスターとどこが同じであり、どこが異なるかをユーザは自然と意識することができる。その時に、数々の気づきが得られ、その結果を蓄積することでより広く、深い知識を知ることができることを確信するはずである。


 製品開発のマネージャは開発日程や原価、品質などの視点で設計を判断する必要がある。今日、3DCADシステムが運用され、このような判断をどのように実施すべきか迷っている企業も多い。


 知識管理システムは標準の知識に比較して良否を判断することを基本コンセプトとしている。そのためには知識管理システム内で、標準の知識と実際の設計の2つが扱えることが必要である。この両者を比較する手法とその比較した結果を共有することが機能として織り込まれている。


 まず、比較する手法は3DCADモデルへの特徴点記述という方法を用いている。ここで特徴点とは人が気づきを持った対象となる3DCADモデルにおけるx,y,z座標である。他者からどのようなことに人はどのような判断をしているかを見える化する方法である。それには、あらゆる対象がその特徴点記述の対象となりえる。そこで、特徴点の対象を点、線、面、部位など形状だけでなく対象を区分する言葉を選択する方法を採用している。これによりx,y,z座標と区分をセットにした単位を比較対象の単位と定義する。


 比較した結果を共有する方法は3DCADモデルのひとつの特徴点に対して、複数の組織がその知識を記述できることと、標準の知識と実際の設計の比較した技術判断の結果を保留点、問題点、承認点などの区分を登録することで、エンジニアがどのような判断をしているかを他者やマネージャに見える化する方法を保有している。エンジニアは知識がないことは判断ができない。


 従って、知識がないことは保留点とされる。知識があることは問題点か承認点のいずれかに判断される。判断に使われた知識は知識管理システムで記述できるので、知識があることと無いこと、技術判断の区分にマネージャは着目し、製品開発のマネージメントに活用することや、技術の進展をリードすることができるのである。