製造業のイノベーションと高効率なものづくりに必要な技術知識の蓄積

グローバルエンジニアの育成は急務

グローバルエンジニアの育成はこれまでどおりのOJTではその逼迫度に合わない。そこで、ITを活用した現場的な価値をもつ方法を提案している。物や事の理解は、人がその場面に出くわした体験から身につくもので、その体験を解決する中から、これまで知らなかった知識を習得し、より広く深い知識として記憶される。このような事柄は、企業や社外アウトソーシングの人でも同じである。


 しかし、これまでのアウトソーソングはその結果を求めるだけであったが、アウトシーングが経験した現場を企業に提供することを行えるようにすることである。先のコールセンターにて顧客の会話がテキスト化され、蓄積されることと同様に、企業、社外のエンジニアが日々、直面していることを蓄積できるようにすることである。

製品開発部門の人材育成


 製品開発、設計段階では、現場とは、設計者と生産技術者が設計構造について検討し、判断をする仕事である。この時には物はなく例えばCADにより作図された3DCADモデルである。あるいは、CAE解析者が解析した結果のデータや、実験部門が実験した結果のデータである。


 今の各製造業でのこれらの現場の仕事は、その当事者だけが知り得、その当事者はその知り得た知識を誰に伝達すべきか知らないことが多い。結局、現在のエンジニアリングは人に依存した方法であることばかりであり、CAE、CADが採用されてはいるものの、本当に局所的な知識共有しか行われていないのである。

社外者も同じ知識共有が必要


 このような職場環境に。社外者が共に働く現場では、同じく、社外者に特定の知識が個人持ちとなることは否めないことである。
 IT技術の活用をこの知識蓄積に対して実現することはエンジニアの考える仕事の可視化になると同時に、エンジニアの考えたことを生産する側と共有することが可能となる。

製造部門での原価低減


 また、生産現場では、物を手にしての原価低減や品質改善、作業改善の取り組みが行われるが、この時、現場では、実際の部品に張り紙を施し、どこの部分をどのように改良すると良いかを指摘しあうことが多い。その指摘した結果を製品の設計者と議論し、採否を決定することになる。

現場で発見した知見の蓄積が必要


 仮に、この改善の張り紙を製品設計者の作成した3DCADモデルに対して記述したら大きなメリットがあるはずである。まず、順番に設計者や生産技術者は3DCADモデルに製品開発段階での設計構造を詰めてきた現場の知識を記述する。そして、その3DCADモデルに記述された製品開発段階での現場の知識を参考にしながら、実際の生産現場での原価低減や品質改善、作業改善が提案されるということが可能になる。


 このことにより、社内関係者の業務スタート時の保有知識はあるレベルに高められ、その共通知識をベースにした議論は、より効率的に網羅的に進めることになる。その議論を通じ、更に参加者はその知識を深めることにもなる。また、この議論を同じ3DCADモデルに記述することで、次回の設計に考慮すべき知識を特別な方法を用いることなく、設計者に参考とさせることが可能となる。このように製品開発や生産における意思決定に使われた知識は大変重要で価値のあるデータであり、その意思決定に例え社外者が参加していたとしても、その意思決定に使われた知識は、企業の知識としてITを活用して企業の財産となる。このことは、これまでのエンジニアリングの仕事のやり方を抜本的に変えることになるだろうと考えられる。

開発プロセスへのものづくり知識の活用


 これまでのエンジニアリングは設計、生産技術、生産の3つの機能に大きくわかれ、その順番に製品開発の設計情報は流れてくる。しかし、その流れてくる設計情報を待つことではなく、積極的に取り、生産側の要求を設計構造に織り込むことで、双方のやり直し削減や、低コスト、高品質な製品設計に英知を集結することをコンカレントエンジニアリングとして推進してきた。

人海戦術では高効率な製品開発は難しい


 しかし、この方法は、あくまでのマンパワーに依存し、繰り返し発生する問題点や製品開発に参加するメンバーの知識差を要件書やチェックリストなどの文書による方法にて、少なくとも、再発防止を図る仕掛けを構じつつ、設計者の設計力を向上させることを狙っている。当然、製品開発を繰り返す度に、要件書の数やチェックリストの項目数は増加の一途をたどり、設計の出図から生産側の回答までの期間が同じ場合には、物理的に図面検討者を増加させなければならない。また、その標準化の検討も場合わけが増え、体系的に維持する工数も増加する。ここに、アウトソーシングが活用されている。この図面検討現場にアウトソーシングを活用すると、現場の知識は蓄積されず、部分的に社外者が保有することになる。その結果、その部分の検討能力を有する企業内の社員がいなくなり、益々、社外に依存する形に陥っていく。 


 このような方法での製品開発体制では、企業の品質向上、原価低減、作業性向上などの視点が社外者保有となり、企業自ら、製造原価を計算することすらできない最悪の状態になりかねない。製造原価を計算できない製品設計者や生産技術者のプロジェクトでは、グローバルな価格競争に打ち勝つ製品開発をすることができないのは当然である。また、仕入先の部品の原価を見積もることのできない調達機能や設計、生産技術では、企業のビジネス戦略そのものを間違える可能性がある。 

日本の製造業の課題


 日本の製造業はここ20年前まで規模の拡大の一途にあった。そして、リーマンショック、欧州の財政危機、円高による輸出産業の採算悪化など、国内は規模の縮小局面に入っている。そして新コロナ。この規模の縮小局面では、これまでの規模の拡大に必要であった生産設備は余剰な設備になり、休止、工場閉鎖することになることを避けられるとは考えにくい。


 一方、海外にはサプライヤを含め、生産工場がシフトすることも避けられないことである。国内で言われた垂直立ち上げは、今後、海外で垂直立ち上げが必要であり、QCDを確保した生産拠点の立ち上げ力が必要となる。そこで、生産技術者の育成が急務となる。これからの日本の製造業はどんな方向に向かっているのだろうか。もちろん新しい製品を生産することもあるだろうが、消費が海外主体のものは、安い労働力がゆえに、海外で生産することになる。また、耐久消費財も益々、中国、韓国などのアジア製が輸入されることになるだろう。

イノベーション企業への転換の為のものづくり知識の蓄積が必要


 日本の均一的な学力を生かす産業にシフトせざるを得ないだろう。要するに時間消費型で行える労働は海外に移転されてしまう。そもそも、そのような仕事は世界中で競争下に置かれてしまい、日本唯一のものづくりではなくなるだろう。知恵を使う産業・業務にエンジニアがシフトする。知恵を売る企業やものづくり知識を売るビジネスが優位となる。イノベーションを発揮できる企業こそ生き残るのである。


 小さくは企業内での人事異動における保有知識の移動、そして、アウトソーシングによる知識の社外流出、グローバルな生産拡大によるものづくり知識の海外流出などこれらは全て根っこが同じである問題に起因している。それはものづくり知識がこれまで、そしてこのままでは人に蓄積され、決して、組織や企業の財産としてきていないという共通の根本問題にあると言えよう。

製造業のアウトソーシングは要注意。人材育成を行って内製化の要否を検討すべき

アウトソーシングに有益な現場知識が蓄積されていく

標準化された業務であっても、その仕事に従事する人は、標準通りの手続きと判断に沿って業務を遂行すべきかを判断し業務を行っているはずである。今、コールセンターは進化し続けている。顧客からの電話応対にITを用いた標準対応画面があるとともに、顧客応対の会話を全てテキスト化し、記録している。この必要性はどこにあるかと言えば、アウトソーシングに電話応対を社外化しても、その応対(現場)の事実はしっかりと記録し、その記録から、見落としてはいけない顧客要求を収集しようとしている訳である。

このことをエンジニアの現場調査の社外化と比較すると分かりやすいはずだ。エンジニアは面倒な現場調査を社外に委託した場合、結局は現場の問題を知り、知識を増やすのは社外者である。しかも、その調査の結果を整理する業務まで社外化した場合には、判断項目の選定まで含めて判断を社外依存していることになる。確かに、その結果を企業の担当者(管理者)はチェックして、良否を判断することは行うであろうが、その方法や内容のチェックに甘さがでることは容易に想像できるところである。

フィールドサイエンスの重要性


 結局、現場の調査の社外化は、新鮮な事例に触れ、知識を増やす機会を企業自ら放棄し、社外にその能力を付与することに他ならないのである。したがって、その社外メンバーは長期に渡り、その企業にて固定的に採用されることになる。企業からみれば、失うことのできない知識の保有者となっているからである。川喜田先生はフィールドサイエンスと呼んだ分野である。

社外化は管理から改善の対象から外れやすいので注意が必要だ

一方、このような社外化を行うと、面倒な仕事はどんどん社外に移りやすい。特に、生産量の拡大時はその傾向にある。かつては、派遣法などの整備が無く、必ず企業内で片付けるしかない仕組みであった。ゆえに、業務の効率を向上されることの改善が多く行われ、また、標準化も活発となっていた。社外化が広まり、見かけ上は一部の業務が社外にて実施されることで、企業は余裕が増したかに感じるが、実は、社外にて、業務の標準化が活発に行われなければ、継続的に一定の費用支払いをする必要がある。社外は売上を増やしたいので、積極的に改善をし、同じ業務成果でも、自ら請求額を下げることはしないのではないだろうか。


 毎月、毎年、一定のキャッシュアウトが発生することへのメスを入れていくためには、その業務の内容と質をチェックする必要がある。つまり、そのためには、企業にて業務管理を実施する役割を持つ必要があり、間接業務に更に間接業務を生み出してしまっていることに気づくべきである。一旦、業務管理は楽であり、そのような仕事を良しとする風潮が企業内に広がると、いたる組織で社外化が拡大する。

社外化した業務を内製化することは大変難しいことになると知ること

一旦拡大した社外化を内製化することは大変難しいこととなる。ノウハウや経験がないため、企業にその内製の仕事を行える人材を育成することが必要であるが社外化した期間と同じ位の育成期間が必要であるからだ。

物流コストは手を出しにくい社外化である

IT業界ではSCM(サプライチェーンマネージメント)の取り組みが行われている。自然の災害が更にその適用拡大を加速している。SCMの目的は、物流コスト低減にある。しかし、物流は今や、グローバルな業務であり、企業だけで、グローバルな物流を実施することは不可能である。企業の子会社や専門の物流会社とグローバルな物流を実施せざるを得ない。この物流も社外化の1つである。社外化はその企業の使命として、積極的なコスト低減には結びつく可能性は少ない。質的には正しく輸送されても、コスト的には難しいことである。QCDの中で、Cは劇的に改善されない。

ものづくりの社外化は内外製の価値と企業の本質とを考えて行うこと

これと同様に、製造業も、部品や加工、材料を社外に依存している。物を輸送するSCMではなく、ものをつくるエンジニアリングチェーンマネージメントが必要になる。ものをつくるエンジニアリングには開発、設計、生産などの業務において、QCDへ与える影響が強い。社外化されている業務はこの分野に多くあるはずだ。設計、実験、CAE解析、図面検討、試作、加工、設備設計、工程設計、量産トライなどに多くの業務に社外を活用している。これらの業務は企業自身でかつては遂行していたことである。

製造業の人材不足の対策は何をすべきか

社会環境の変化として、今、若い人の就職が厳しい。一方、年金支払いの逼迫から企業には定年延長の動きを国が進めている。企業は固定費を削減するために流動的な人材を欲しがり、業務を社外化する。企業から見れば、定年延長によるコスト負担増で、ますます、必要な時だけ人を採用できる業務の社外化を進めざるを得ない。その結果、若い人の採用を減らす。また、円高によりグローバルな生産拡大は益々強まり、その結果、現地採用は増えるが、国内の採用は延びない。

このようなことの結果として、今、製造業において人材不足が大問題となっている。人材とは仕事のできる人材である。社外化拡大以前に社内で内製の仕事の経験のある人材が不足しているのである。企業は独自に集約していた固有のコア・コンピタンスを社外化し、企業の知識体系のいろいろなところに穴が空いてしまっているのである。しかし、失われた知識の復活には大変な時間が必要である。少なくとも10年は必要である。その間にはグローバルに勝てるエンジニアを更に育成する必要がある。

グローバルエンジニアの育成が必要

さて、ここからが本題となる。グローバルエンジニアをどのように育成するかが生産拠点を海外にシフトしていく際に重要である。これまでのように現場のベテランが体でもって海外の生産の指導をする姿は古い。日本はこのような精神論や美談をそのまま、受け入れてしまいやすい。電気、自動車などの韓国、中国の台頭はどのようになされたかを考えれば良い。彼らはもっと製品、生産を合理的に進めてきている。自国のベテランなどは日本ほど多くない韓国が、グローバルな生産を立派にできている。


 グローバルエンジニアは英語ができれば良いわけではない。英語は必要だが、もっとものづくりの設計、生産の知識と経験を持つエンジニアの育成が必要である。企業により、この必要とされる知識と経験は異なるが、その育成への取り組みが急務である。インターネットで育った世代が企業の管理者になるのも間じかに迫ってきている。日本のものづくり企業がこれからもグローバルに勝ち残るためには、海外企業には少ないとされる生産技術のエンジニアを育成する必要があるのではないかと考えている。

DX推進の壁になっている製造業のアウトソーシングを見直すべき。

製造業のアウトソーシングは拡大している

企業のアウトソーシングは企業の成長と共に増える傾向にある。これは生産量の拡大などにより、社内の正規社員を増やすのではなく、外部の派遣企業などを活用し、一時的な業務負荷への対応をするためである。或いは、費用が相対的に少ない社外を利用することで、利益を増加さえるために行われている。

アウトソーシングの問題点

しかし、アウトソーシングにおける問題点は企業のコア技術を社内に残すことができず、生産量の縮小などで再度、社内でその業務を実施する必要があるときに、コア技術が失われ、社内では実施することができない問題を起こすことになる。(技術の喪失)。もう1つの問題点は企業が面倒な業務をアウトソーシングすることで、企業内に業務を管理するだけの社員が増加し、管理業務を仕事と勘違いしてしまうことである。(風土の荒廃)

ものづくりのコア・コンピタンスを忘れてはいけない

今、この2つの問題点で製造業は大変な状態になってしまっているのではないかと推察している。前者のコア技術の社外化から問題の深刻さを挙げると、まず、コア技術(コア・コンピタンス)そのものを意識せずに仕事が大変だから、人が不足しているので社外化していることが多い。コア技術とはものづくりの作り方そのものの技術だけではない。エンジニアはかつて現場の場数を踏んで成長してきたはずである。 

製造業の人材育成と職場環境

しかし、今の時代、新入社員のエンジニアは、いきなり社外の人が活用された状態にある職場環境から仕事を覚えていくしかない。それも自分の仕事は細部化し、与えられた時間の少ない中で業務を進めていくしかない。これは与える側(管理者)の仕事の与え方の問題もある。じっくり考えて仕事を遂行する習慣を身に付けるリードタイムが社員の育成には必要なのである。

考える人材を開発しなければならない。教えられてこなかった教育。

また、インターネットにより、分からないこと、知らなかったことも、短時間に収集することができる。収集した図や文言を引用し、仕事の成果にしてすませることもできる。探すことには長けてはいるが、考える力が身につかない方法である。

現場の見て、頭で考える習慣をつけること

かつてのエンジニア達は工場の現場で物を手にし、油にまみれながら、何故を考え、自分の結論に至り、その結果を、議論することで、更に自分の知識を深めていくことが業務の中で行うことができた。このことは、今でもできない事にはなっていない、できる環境は何も変わっていない。

現場の調査はコア・コンピタンスの重要な業務である。

しかし、現場に足を運ぶ回数が減っているのはどこに原因があるのだろうか。それは、現場の調査は時間と手間がかかるから、社外化していることにも原因がある。他の部署では同じようなことを社外を活用し実施していることを知ると、自分の部署でも同様なことに社外活用を実施したことに思い当たるはずだ。

忙しいと言う職場は忙しくない。それはアウトソーシングしているからだ。

忙しい組織(実は皆忙しいと思うことが多く、暇だと思うことは段々と習慣化し、いつも忙しいと思うように人は考えやすいものだ)はまず、何から効率化すること言えば、現場の調査、あるいは事例の整理などを社外化するはずだ。

効率化とアウトソーシングは逆行している。

効率化とは人が減る方策をまず考えることが先であるのに、生産量の拡大時は、社外化を先に選択してしまったことが多い。実は、この時間がかかり、手間のかかる仕事こそが企業に重要なコア・コンピタンスが含まれていることと管理者は気づくべきである。

経験の積み重ね。面倒なことを避けては技術は身につかない。

振り返るに、人の仕事とは何か。人は全く新しいこと、物に気づき、生み出すことは稀である。それこそ天才と言われた歴史に名を残す賢人以外は、過去の経験や知識をよりどころにして、業務を行っているはずである。手続きや判断が標準化されているものであれば、容易に業務が遂行できる。標準化されていないものであっても、過去の経験や周辺の関係者の知識をまとめて、1つの結論に至っているのである。

考える仕事は内製に戻すべき

コア・コンピタンスは標準化されていないことや物に行き当たった時に、どのように判断をするかという仕事として位置づけられる重要な固有能力である。もし、仮にこのような判断も含めて社外化した業務があるならば、早期に内製化すべきである。


 企業においては、物事を判断する行為や力そのものが企業の能力であり、財産であるはずだ。その一部を社外化してしまっては、もはや企業の能力を社外に分け与えてしまうだけではなく、社外の力を活用しなければ、その業務が行えないことになってしまう。

DXの前に行うべきことはファイル管理である。

ファイルは見つからないのは大問題

これまで、ファイルが見つからない、探せないという問題が大きいということを述べてきた。もう一つは、ファイルの記載内容は正しいのかという問題もある。過去のその時は、その内容で良かったが、現在はちょっと状況が異なっているということもある。しかし、それでも過去のファイルを見たいという欲求は変わらずにある。ファイルは見つからなければいけないものだと思う。

ファイル名と内容の一致性が保証されていない

人はどんなに年齢や経験を経ても、まだまだ知らないことがあるものである。企業の中では、なおさら、知識は共有されなければならない。
 ファイルの名前やホルダー名称からは、その中に記録された知識がどのようなことに関するものかは読み取れない。

これは例えば、1から5の数字が書かれた5枚のトランプカードが目の前にあるとしよう。数を数えられない幼児には、見た目の違いしか区別ができない。年上の子は、順番の数字であると理解する。このような順番の知識が隠れている。

ホルダー階層の区分が理解しにくい。普遍性をもっていないからである。


 ホルダー階層やファイル名を人が見た時は、幼児がこのようなトランプカードを見たことと大差はないのである。ある事の説明のためには、そのことが理解させるようなストーリーとしての説明文が別に必要である。しかし、分かっている自分がわざわざ他の人のために説明ストーリーを記述することはしない。もしも記述してくれたならば、このストーリーはその人の知識をベースに説明したストーリーとなる。ゆえに他者にはストーリーが一部分、理解できないこともある。そのような場合は、その箇所を人に質問し、理解することになる。

システムに期待していること

それは、ある人の仕事の結論を、その理由をグラフや表や文書や絵を用いて説明することが手間なく行える必要がある。人が頭の中で作ったストーリーが結論を書いた文書に関係して手間なく作られると良いのである。


 そして、それを共有し、分からない人の質問と回答を自由にこ記述できるようにすることで、説明のストーリーが膨らみのある全体的な知識にすることができるのである。人の思考プロセスの記述をすることで、知識の記録が実現できているということである。

読み手が書き手と同じ理解ができること

他の人が作成した一つファイルとして独立した文書は自分が思考していることとは異なるものである。そのためにベースとなる知識が共有されなければ納得できないことになる。この理解度の差は、企業における意思決定に大きな問題である。理解の差を埋めるために、また別な資料を作る無駄をしている。知識の不足した管理者による正しくない結論になってしまうこともある。

CKWEB2が実現している便利さについて


 これを防ぐには、デジタル化された情報に対して、簡単な工夫をすれば良い。それは、表や絵やグラフや数字や文書など、いろいろなアプリで、いろいろな拡張子でも見ている目は画像になり同じフォーマットである。したがって、全ての文書はイメージデータに変換し、原本との区別と改竄を避けつつ、ckweb2 による特徴点記録法を用いることで解決できるようになる。


 帳票、フォーマット、形式ということを考えないことが必要だ。人の思考に元々は存在しないことであり、創造性の邪魔になるように思えてならない。紙に自由記述しながら、仕事ができるようにならないものかと考えたのである。

製造業のものづくり知識の記録構造と検索性

情報探索の入口は分かりやすいビジュアルな抽象化モデル(絵)である必要がある。その絵は実際の具体的なものであるが、そのものが何かを知ることが目的ではなく、その絵から自分が探したいことの分野を区別することが目的である。絵が増えたら見つけにくいので上位概念的なまとめた絵を登録する事が重要である。


 例えば、子供向け図鑑の目次の絵のような大分類がよいだろう。この大分類は、個人のメモを記録するならば、自分が関心のある分野を自分が想像できる絵ならなんでも良い。要は、自分が間違えることなく、その内容を管理できれば良いのである。これは容易なことである。


 一方、仕事のためのメモを記録するには、仕事がどのような分野であるかが分かる絵を入口に配置する必要がある。企業の中で共有するのであるから、誰でもその絵を見て、中にどのような情報が記録されているかが分かる必要がある。より分かり安く間違えないために、テキストで文言を絵の中に記入しても良い。


 例えば、製品を開発して販売する企業であれば、設計、製造、販売などのイメージがつく絵が良いだろう。設計でも複数のカテゴリの製品を設計する企業ならば、カテゴリA、カテゴリB、カテゴリCの区別のつく絵でも良い。製造が複数の地域にある場合は工場a、工場bなどの絵で良い。変化の可能性のある組織の名称を用いずに、一般的な呼び方である組織名称を用いることが必要である。工場名称などは滅多に変更しないだろうし、県の形のイメージに工場がある絵を用いれば、誰でも区別つくであろう。


 企業の中のある組織の企業人のメモは、やはり自分の担当分野を明示できる絵を情報探索の入口にする。この絵も誰が見ても内容が想像できるものであることが必要だ。非常口のサインのようにものを想像すると良い。


 このように入口を表す明確な絵を取り決めて用いることが情報蓄積の第一歩である。情報は粒度も分野も異なるもので、それにもれなく分類を決めようとすると逆に分類からはみ出す情報が出てきてしまう。私達のホルダー名称の不思議な命名は、変化する分類と仕事の内容によっては複雑化されたことを表している。そこまでの分類を決めるのは統一的で遵守できる範囲を超えてしまうので、全号で説明したように失敗してしまうのである。


 では、大分類の中にどんな絵を配置するのかと言えば、それは、その組織における最終アウトプット文書のイメージ図を用いるのが良い。設計の最終アウトプットイメージ図は部品表と製品の設計図と日程表である。それ以外にあるものは最終アウトプットを作成するための、文書である。部品表と設計図と日程表の3つの絵にメモを記述するのである。それぞれの絵には、気がついた時に複数のテーマの特徴点を追加していくのである。既にテーマが登録されているならば、その点に更に追記するだけである。テキストと参照文書を添付するだけなのでシンプルである。


 製造側は、何をどの様なプロセスや日程で行うべきかを書いた標準日程表、生産ラインの全体図、製品の全体構成図などが検索の入口モデルにすると良い。その中に業務日程詳細図、加工プロセスの詳細図、部品図などをモデル登録する。全体図にも詳細図のどのモデルにも特徴点登録できる。詳細図の中にも特徴点登録できる。それぞれの特徴点には参照モデル登録できる。モデル登録したモデルは他のモデルのどこにでも親子関係を定義できる。このようにすることで、製品構造と工程と生産計画を関係づけて記録することができるようになる。


 ここで登録する情報は技術的思考を記録することであり、関係者の意見を記録することである。また、その文言を全文検索対象にする事で、改めてタグを付与せずに、もれなく検索できるようにすることにある。


 モデルの親子関係は詳細を図で説明する時に必要であり、参照図はより横断的な知識共有により決定合意の速度を高めることにある。
 親子関係を後で付加できることは、思いついた時に追加できる自由さのためである。誰でも完全なる網羅的登録を最初からできるのではないから。


 モデル図を的確にたどり、必要なモデルを見つける方法は、モデルのネットワーク図の見せ方が重要である。言葉を知らない場合のビジュアルな図の探索発見方法と対象の検索言葉を知っている場合のなどの全文検索が重要である。        絵の中に特徴点を記述することは、技術情報が必ずその絵の中にあることを意味していることを保証している。絵に特徴点を登録しなければ会話が登録できないようにできている。


つまり絵と会話は分離されることがない。
 絵を見つければ技術情報を見つけることができる。また、言葉を知っていれば、見たこともない技術情報を絵を指し示して理解することができる。
 このよう情報を知る目次的な機能としても役に立ち、真の図面などは、この後ろに続いて他の固有システムを操作して知ることができる。


 一方親子関係の中あるいはそれを超えた関係の中で付与された特徴点はどのように振る舞う必要があるのか?
 親の会話テーマが子供の会話テーマと親子の関係テーマであるかは難しい。
 1つの目的の為に、複数のテーマを検討する場合には、関係を定義できる。親のテーマがいつ子供のモデルのテーマがその親子関係として認識されるかはわからない。親のテーマがいつまで親のテーマでありつづけるかは確かではない、その時の親のテーマにしただけのことである。このような方法で、日常的なメモを後で検索しやすくすることができるのである。