製造業研究者の知識と問題点の記録の利用例

ビジュアルなイメージ図(構想図)にアイデアを記述する

先回の投稿では組織での用い方を紹介したが、今回は個人での技術の記録方式を説明する。知識の記録方式は研究者や小説家などのクリエータにも便利である。研究者のこの記録方式の使い方を説明する。研究テーマが決まっている場合は、そのテーマを想像しやすいイメージ図(写真)を用意して研究テーマの表紙とする。このイメージ図にどこでも良いので特徴点と引き出し線を描く。普通ならば、白色の用紙に向かって自分の考えをメモすると思う。私のやり方は、考えたことを後で検索しやすくするために、研究テーマを表すようなビジュアルな絵を用いて、その絵から発想を展開していくのである。このイメージ図は他者から見ても、その中に含まれていることが推察できるイメージ図を選択する。イメージ図の中にテキストで分類名を記入しておくことも明確化できて良い。
このように対象をビジュアルなイメージ図を用いる理由は、子供向けの図鑑のように記録することが、誰でもわかる方法だと考えているからである。子供向けの図鑑は、分類が大きな単位であり、細かな分類を用いていないのが良い。哺乳類の犬猫程度の絵なら、言葉や文字が分からなくても、絵と関係させてその特徴(例えば鳴き声)は記憶されているからである。

特徴点記録方式によってアイデアを膨らめる

 イメージ図に書き加えた特徴点に、自分の考えを書き込んでいく。考えが深くなっていく方向と、広がっていく方向の両方に、自由に発想し記載する。この部分はマインドマップのような方式である。異なる点は、記載する考えがひとつ1つにQPPモデルの区分が付与されることである。目的は何か、その実現のためにどのように考えることを決めたのか、決めた考えを目的を実現できるようにするためにどのように実行しているのかを、常に分類して思考を整理することが重要である。なぜなら、そのような考えが沸き起こった内面の意識はすぐに記憶から消えてしまうからである。
 考えを書き込んでいくと、イメージ図の特徴点(考えの出発した点)とは異なるアイデアが湧いてくる。その時は、この同じイメージ図の別な座標に新たな特徴点を作成し、思考を展開していくのである。したがって、1つのイメージ図の多くの特徴点を作成することが自由にできるのである。途中で別な特徴点からの考えと関係することが出現する。その場合には、その考えと参照関係の関係付けをするのである。

参照図を添付して、既存技術との相違を説明することが可能となる

 それぞれの考えには、いつもイメージ図や文書を参照登録できる。そして、そのイメージ図の中に添付することになった理由となる部分に、特徴点を作成して、考えとイメージ図の中の部分との参照関係の関係付けを行うのである。
このように研究者はテーマを表す1枚のイメージ図に対して、空間的に知識のネットワークを作成する。作成された知識ネットワークの中から、QPPモデルの重要な分岐点を特定し、研究テーマの主たるストーリー作りを行うことができるのである。そのストーリーを元に、分岐点でストーリーから外れた考え方の記録を、目次の1つとして全体構成を立案することができる。このような思考を紙のメモだけで行う場合は、関係付けの展開により、都度、机上でのメモ用紙のレイアウトとグループ分けのやり直し作業を繰り返すことになる。これは、思考ではなく、単なる膨大な無駄な作業である。したがって、知識の記録方式には、IT技術でも検索と検索結果後の操作性が非常に重要な機能である。

製品開発でのデザインレビューにおけるQPPモデルの活用方法

製品開発の企画書をQのモデルとして利用すること

製品開発の実務適用についての特徴点とQPPモデルの使い方を紹介をします。製品開発の企画段階では、製品を市場に出す狙いは何かが議論され方針が決定します。この段階では例えば製品企画書という文書が作成されることでしょう。この文書を作成する人は、まず、過去に作成された書式の企画書を読むことになる。参考にすることは漏れの無い仕事の基本だからだ。これの過去の企画書を対象と呼ぶ。この対象とした文書に変更すべき点に引出し線を引く。その引き出し線の頭に、変更したいの内容を記述する。これらを対象の文書に書き込んでいくのである。これで、1つの企画書のアイデアが生まれたことになる。ここで大事なことは、帳票の記入エリアの大きさ制限を気にしなく自由に書くことができることである。常に内容が重要である。見た目を意識すると自分にも他者にも理解しにくい不十分な説明になる。頭の使い方を見た目のことから離れて、考えることだけに集中するのである。

設計、生産、販売など多面的な意見を企画書に記入する

次に、既に過去の帳票にも表現されている区分を付与する。全体として企画書はQの区分である。そして帳票の中にはには、例えば記入欄ごとに、テーマ、背景、課題、市場動向、必要な機能、販売予測、価格設定、発売時期、などの書く欄がある。これらの項目にもQPPの区分を付与する。区分する時は目的、設計、実行段階のどこで守ることかで分けること。全て企画書を書いた部署の責任ではないという意識で行うこと。
この企画書のアイデアに対して、社内で議論されることになる。その議論は、テーマはもとより、記入欄の内容=つまり引き出し線の頭に記載された内容についての意見である。それらは、1つひとつの引き出し線の頭に、複数の意見があり、その意見に対して、更に複数の意見が出される。つまり1枚の過去の企画書に追記する形で、その後の議論は全てこの文書に記載することができるのである。今日、これらはIT技術を用いて、クラウド上にある、弊社株式会社デジタルコラボレーションズのckweb2 サーバに保存することができる。

自部署のアウトプット文書をモデルとして、設計の企画書と紐付けする


企画書の次にそれぞれの組織が業務を行うことになる。その時に、それぞれの組織の業務においてアウトプットする文書がある。今度はそれぞれの組織での過去の文書を対象とする。自組織の文書に新しい企画書の変更内容についての意見や注意点を引き出し線を書き、その頭に、内容を記述する。この時、企画書のアイデアに書かれている特徴点と自部書の記載した特徴点との間には参照関係を登録することを行う。

QPPモデルのベネフィット

これにより関係組織の考えに対して自部署の考えを関係づけて記録することができる。これらのことを繰り返すことで、文書が決定されていくプロセスにての考え方を記録することができる。最終決定したそれぞれの文書をサーバーに保管すればよく、その際に、過去の企画書と最終の企画書との関係に参照関係を登録する。このようにして、企画から設計、生産に関する自部署のアウトプット文書を作成しながら、考えたことを記録することができる。これにより、キーワード検索や文書のイメージをキーワードから検索表示し、同時に、文書作成途中の議論を繭の糸の如く、引き出すことができるのである。

製造業のデザインレビューに必要な基本的な技術の共有

技術の共有に必要なQPPモデルの開発経緯

なぜQPPモデルが必要なのかを説明したい。それは私には普遍的な分類が必要だということです。多くの図鑑や辞書にある分類も、時代と共に変化している。その時の分類の中で、その枠の中にあることやものなのか、そうでない発見的なことかを区別する必要がある。大多数の人が間違えなく分類できる程度に分類を運営するのが良いと考えている。その中から、欲しいことを見つけるために、達成したいこと、それを達成するために考え決めたこと、決めたことを実施するために行うことの区分を付け加えるのが良い。この3つの区分をQPPと呼び、あらゆることをQPPのどれかの区分を付与することとしたのである。この中には思考ややり方や達成したいことを本気で達成するために、取り組まねばならないことなど全てが包含できると考えている。QPPはそれぞれが関係性を持ってい区分なので、その関係も保持していることになる。しばらくは、このような分類や区分の付与は自動的に行われることはないだろうとも思います。
 昔、ものづくりの手法を研究していた頃、QFD(品質機能展開表)手法を学んだことがある。この手法は表を連結し、ブレークダウンすることにより、考え方を記述する方法である。残念なことに、ITが未発達の時代の手法であり、2次元であった。3次元にできたとしても、俯瞰的な検討はできない。

組織に必要なことは第一に知識の共有である


 人の仕事は、他者が活用できなければならない。自分の固有能力として、或いは存在価値として個人所有する時代ではなくなった。むしろ、積極的に共有し、皆でアイデアを洗練させていくことが重要である。発想力が必要とされる時代である。グローバルな他者の知識を活用するには、インターネットを介してのベースとなる知識が共有されている方が、迅速な打ち合わせができる。ベースとなる知識が揃っていない会議は質問だけに留まりがちである。
 データを見ただけでは何を意味していることなのかや、それはどのような背景から作られて、記録されたのかが分からない。それが理解できないと第三者は不安でそのデータを使うことができない。私達は結論も知りたいことはあるが、今後の思考のために、なぜ、その結論に至ったのかを知りたいと思うのが自然である。そうでなければ社会は進歩していかないとも思う。Whyの伝達と共有は、人の思考の方向性を正しく、集中させることに役立つことである。

ものづくりのDXに必要な知識の記録方式の基本構造

WHYの記録ができること

特徴点は知識の記録方法の基本構造である。この基本構造に意味を付加すると、思ったことの検索対象が明確になる。インターネットにおける検索はどうしても商業主義が表面に出ている。その検索結果は、知りたいことの候補らしいことが、知りたい人の優先順位とは全く別な順で登場する。そのために、多くの検索結果を試行錯誤して、自分の納得できることを特定するやり方となっている。大変時間を無駄にしている。不覚にも、知りたいこと以外の興味が湧いたことに深入りしてしまうことも多い。自分のメモはこのようなやり方では不便でならない。企業の業務も、このようなやり方では、スピードもおぼつかなくなる。もっとスマートな方法はないものか。
 人の思考には、何をどうしたいのかということが基本構造として持っている。何をどうしたいのかの前に、隠れがちであるなぜ(Why)が存在している。何故が不明確であると、そこから続く何を、どのようにが、ズレてしまう。目的が重要である。人はどんな時においても目的があって行動している。日常の行動においても、ものづくりにおいても目的がある。特にものづくりにては、この目的をQuality(ものの品質) と呼ぶこととした。そして、その目的を達成するための設計業務をProductと呼び、その設計を実際の現場で製品に加工することをProcessと呼ぶことにした。これらはものづくりの仕事の場合であるが、一般的には、仕事の実現したいこと(機能)Functionと進め方Procedureと実行Practiceと考えても良い。これらを大きくはQPPモデルと呼ぶことにしました。

多様なアイデアや意見が記録できること

目的の実現のために、具体的に取り組むことや考え解決すべきことは複数存在するものである。ここから目的はn個に関係性が広がる。更に、取り組むことをもっと深く考えていくとm個に広がる。これによって、目的を記述した特徴点はn×m個の特徴点が生まれる。このn×m個の考えるべきことから生まれた結論を、実際に実行させる時にも実行時に注意すべきことがp個あるとすれば、全体としての特徴点はn×m×p個になる。もちろん、この中でも重要度の大きさで選択されることにはなるが、人が考えた全体はこのように増加していく。また、この中には、分岐した枝間に作られた思考の間に関係性を持つものもある。したがって、全体はネットワーク図のようになり、上位概念まで記述すると、3D空間に広がった立体的ネットワーク構造になっている。それぞれの特徴点は大きくはQPPに分類されたタグを保持させておくことで、知りたいことを絞り込んだ検索結果を獲得できるようになるのである。まるで繭のような構造になる。だから外から一本の糸をつむぐことができれば良いのである。ストーリーが得られるようになる。

知的生産の技術をITで実装するアイデアの紹介

知的生産のITと題してまとめたいと思います。

 サーバやPC内のファイルが見つからない。これは今日の大きな問題である。

 そもそも、ファイルやホルダーの名称はその内容を明確に区分できるものではない。

 仕事で用いるソフトウエアは、表や文章、図などに分かれている。それゆえに、内容によって、用いるソフトウエアを決める必要がある。これはファイルを探す上で煩雑さを増す。

 そもそも、自由記述したい考えをソフトウエアやOS間でも、更にはバージョン違いの中でも、登録されたデータの完全なる表示に対応していない。何を用いて考えを記録するにべきか。それに答えるシステムはないようだ。

 ファイルが見つからなければ、考えを整理することは不可能である。貴重な考えやアイデアを記録しておいても探せない事になっている。

 会議の議論も、議事録はまとめられる結果、発話を逐一記録されることは少ない。記録されても、過去の議事録との関係性から振り返って確認する術もない。

 PC のファイルに保存した瞬間から、自身の記憶から解放された気分にはなるが、知りたいことを思い出すまでの機能には到達していない。

 いつのまにか人は好みのソフトウエアを用いて考えの記録をファイル形式にて行うように慣らされてしまったようだ。

 このことに問題を唱える人はあまり見受けられない。不便さを受け入れて諦めているように思われる。

 こまめに、考えを日記のように書き続ける企業人はすごく減っている。かつては手帳にびっしりとメモを書いていた。PCの出現にて、メモを再整理することをしなくなっている。際限なく記録できる事がかえって考える習慣力を低めているようだ。

 原点に帰れば、紙と鉛筆だけで自由な形式で記録できていた。その記録だけを目的としたソフトウエアにより、自由にコミュニケーションすることに制約を与えているのである。

 以上の課題を解決するべきだと思っている。その為に考え出された記録方式を空間座標に記録する方式であり、特許を取得していますので、ご興味のある方は、弊社ホームページにてご覧ください。https://www.d-collabo.com
これまでお読みいただき誠にありがとうございました。