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【製造業の改善と革新の会】

木曜メールマガジン

”原理からのDX”を語る

元トヨタ業務改革室長

#012

今月のテーマ
【過去トラの活用法】

今では、製造業であらゆる仕事の中で用いられる過去トラの利用価値についてのお話です。

今後の配信予定

 

     1、過去トラとは、   

2、対策の重要性、

3、対策は誰がすべきか、

4、エンジニアリングへの活用、

5、現場での利用 

6、製品開発での利用  今回配信

7,生産技術での利用

 

 

【現場での活用】

過去に起こった問題は、特に製造業では過去トラと呼ばれています。過去トラとは過去のトラブルのことで、一般的には過去のトラブルを参考にすることで、同じような問題を再発させないようにしたいと考えています。

しかし、このように過去トラを使い切れている企業はそれほど多くないことが分かっています。過去トラはどのように扱われていますか?と質問すると、サーバーにトラブルの報告書が保管してあります。或いは、トラブルが発生した際には、速やかに社長以下の幹部社員や課長まで一斉メールで伝達していますとの返事が返ってきます。

では、過去トラの内容として、どのようなことが書かれていますか?そして、対策や結果まで記録されていますか?とお聞きすると、実は、その点については十分フォローできていないとのお答えがよく聞かれます。

このようなことがないように、どのように過去トラブルを扱い、活用すると良いのかについて、具体的に解説をしていきます。

今回、過去トラの設計での利用について考えてみることにしました。

1、エンジニアリングの現状

 製造業のエンジニアリングは製品の設計と生産ラインの設計の2つが大きい分野です。

生産計画を立てることもエンジニアリングだと思います。また、部品や材料を発注、調達することもエンジニアリングが含まれます。

 品質管理や市場での品質保証にもエンジニアリングが含まれています。

製造現場にもエンジニアリングが行われています。

 これらのエンジニアリングをまとめて行うことが必要ではないかと思いますが、実際の組織機能の分担の中で、まとめて行う組織をもつ企業は存在しないと思います。

 大きくは設計部門、生産技術部門、製造部門に分かれ、その中に細部組織が構成されています。

本来であればエンジニリング部門があり、それに対して製造部門がある方が理にかなっていると思います。

なぜ、そのように思うのかを私見をご紹介します。

それは、エンジニアリング部門とすると、製品企画から設計完了、生産計画から発注、製造までを2つに区切って見ることができないことになるからです。

お客様の要求に合う価格と納期で商品を届けることができていなければ、企業の売上は増加しません。

その中で、原価を下げ利益を増やすことが必要です。

この2つのことを行うのはどこの役割かといえば、生産管理だけではできず、製品設計だけでもできず、

製造だけでもできないはずです。ところが、この古典的な部署で今でも業務を推進しており、仕事のつながりが、売上と利益アップにつながっているのかがわからない状態になっていると思うからです。

製品企画から設計完了、生産計画から発注、製造までのエンジニアリング機能は、この売上と利益アップに貢献するような仕事を行う必要があり、その計画を立て、生産が実施できる状態に準備する役割だと思うからです。

製造業の中にはこの計画が立てれていない企業があるのではないかと思います。ここでの計画とは、計画を立てるに必要な計算方法が定まっている必要があります。過去、この数量の生産ができたことがあるから、その生産ラインの能力はこの位だと言う経験値で能力を定め、この位の生産をして欲しいと思う期待値で計画値を決めていないでしょうか?

生産ラインには多くの人手が必要です。その人達の経験もまちまちです。時々設備故障もあると思います。このような時には生産計画を達成するために残業も行われます。しかし、これでは利益は減ってしまいます。正しくは、決めた稼働時間で何個の生産ができるはずだという理論的な計画値がエンジニアリング部門によって提示されなければなります。あくまでも理論的な計画値に対しての実績で生産力の良否を判断できる必要があります。先月や半年前に比べて生産量がどうなったかを相対的に比較して良否を判断するのはエンジニアリングではないと思うからです。

2、抽象と具体との行き来

エンジニアリングは想像性と創造力が必要な職業です。製造業はエンジニアリング力が強く働かなくてはいけない産業です。しかし、エンジニアリングが一つの組織だけで完結できていることは少ないと思います。

大きな企業であればあるほど、例えば原価低減というエンジニアリングはいろいろな組織に分担されていると思います。

 例えば、伝統工芸品を製造している現場を想像してみてください。一人の職人が、一人で材料選びから加工法の開発と販売までを行うことは多々あると思います。自分の手で工具を用い、少しずつ仕上げていく時に目でその出来栄えを確認してから次の加工を行なっています。

一人で加工し検査をするステップを細かく何回も繰り返して伝統工芸品は完成していきます。一人でエンジニアリングをしているのです。

 もし、この伝統工芸品を大量生産する必要があると、複数の加工工程に分割をし、それぞれに機械を導入して品質良く大量の製品を作ろうとするはずです。このプロセスは全体を最適に設計することで決められるはずです。

 しかし、すでに量産体制ができている製品では、量産体制を築くことの経験が無い人が主流になっています。全体最適な生産ラインを設計したことの無い人は、そもそも、何をどのように考えて設計するべきかという知識がないのです。

設計は抽象的な思考が必要です。抽象的な思考には具体的な事実や経験が必要です。これにより、お客様が具体的にどのようなニーズがあるかを知り、それに答える製品構想が抽象的に検討できるようになります。その製品構想は、別なタイミングで、具体的なニーズに合致しているかを確認するために、お客様の意見を聞く具体的な行為を行い、この抽象と具体の思考を何回も行き来して練り上げていくことになります。

 今日の反射的なスピード重視の流れの中では、具体的なニーズに対して、一気に製品構想に移り、そのまま製品製造に至っていることはないかと危惧しています。このようなことであると、製品設計の経験の少ないエンジニアは何を拠り所にして製品設計をすることになるのでしょうか。

 それは人に聞きことを主に行うことになります。しかし、その分野のベテランも退職している場合にはどうすべきでしょうか?

 それは、過去のトラブル事例から対策を確認し、現在の技術で見直ししながら設計することになると思います。このようにエンジニアリングにおいて過去トラは大変重要な知識であるということをお伝えします。

また、DRBFMに記述される心配点はこのような過去トラの知識から生み出されることにもなっていることを付け加えておきます。

目に見えない大切なことが過去トラには書かれており、抽象化して解釈を加えることをすべきでしょう。

次回のテーマ
【生産技術での利用】

最後まで購読いただきましてありがとうございます。

過去トラの生産技術での活用お話しします。

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株式会社デジタルコラボレーションズ
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