製造業のコミュニケーション手段の革新の必要性

CKWEB2開発の必要性を感じた経験

ある時、都内の喫茶店で打ち合わせを行う男女を見た。隣にいた彼らは、どうやら服のデザイナとそれの仕立てを行う人達だった。2人は頭を突き合わせるようにして、テーブルの上の書類を眺めながら話をしていた。指でその書類のある箇所を指し示しながら、糸の太さや質は何が良いかをデザインと作り手が意見調整している様子だった。私は横目でその様子を眺めながら、ckweb2 のアイデアを着想したのである。
  実際この仕事をインターネットで行うには、デザイナは自分のデザイン図と参考になるような実際の服、その色を伝える参考色や質感の服の写真などをイメージ図に登録をしておく。仕立てる側は、保有する生地のサンプル写真と質感の分かる拡大図、糸のサンプルと縫い方の実例の図などと型紙をイメージ図として登録しておく。     
 デザインする人は、仕立ての人が登録したイメージ図を参考に自身のデザイン図に特徴点を配置しながら、アイデアや希望を仕立て者の登録したイメージ図に実際に参照登録しながら伝達する。
 仕立てをする人は、デザイナーがどこを、どのような生地や糸で仕立てを希望しているかが具体的に指し示される為に、仕立て側の意見を、デザインのイメージ図の特徴点に追加、或いは他の特徴点を設定しながら、意見を登録することで、双方の意見交換を、スムーズに誤解なく、詳細に行うことができるようになる。

 そして、このような方式で仕事を繰り返すと、自己のデザインと仕立ての記録が蓄積される。しかも、服のデザインや仕立て方を形や生地や糸などで横断的に検索することが可能となり、最終納品までの、コスト調整の議論や納期調整の詳細など、実際にこの仕事を担当した者でしか体得しない知識を誰でも知ることができる業務の環境になる。これにより、企業或いは個人でも、圧倒的に適切な仕事が効率的に行えるようになる。

製造業の生産性向上の肝は対面業務の廃止から

実際、社会ではこのように面対して行う業務が普通であった。実際に人と会わないと、仕事が上手く進まないと思い込んできた。海外と仕事する場合には、事前に出来る限りの確認と調整を行っているにも関わらず。国内だと、まず先に面会する。このような癖をもうやめなければならない。それは新コロナで俄かに必要性が言われ始めたが、本来、ITの進展と共に、ネットワークを介したビジネスが主流のやり方になっていなければならなかったことだ。どのようにネットワークを介して、それぞれの企業の仕事が可能にすることができるかを、社会全体として考えて対応する必要がある。

製造業における写真の活用と知識の蓄積の例

デザイン性や部品の構造などの現物写真の蓄積

写真の整理方法は大変重要だと思う。見た時をそのまま、記録するからである。動画も同じく重要である。月日が流れると撮影した時とは様子が変化している。欲しい写真を一発で見つけることができなければならない。写真を撮影した時に感じたことがあるから、その風景や対象を選んだはずである。しかし、私達は写真という絵だけしか、その時に記録していない。これが問題である。

 撮影者が思い感じたことを明確に記録することは、後の考えの整理に役立つ。そこで写真についても、そのイメージ図に対し、どこが良かったのかなどを特徴点を書き込んで、感じたことを記録する。それは、撮影以後、どのタイミングでも、改めての感想も含めて、1枚の写真になるべくたくさん特徴点を登録する。

特徴点についての説明はこちらからご覧ください


 写真には、山や川、森、草花、人、動物、乗り物、雲もあれば、家の中にある家具、照明、インテリアなどもある。一度、旅行に出かけるといろいろな対象を写真で撮影することになる。例えば、10年間、暇を見つけてカメラを持って出歩いたとすると、撮影した写真をグループ分けして整理したくなる。時間軸だけで分類されるのでは知的好奇心が収まらない。自分の思いや感動などで、グループ分けすると、自分の本当の興味に気付けるかも知れない。

気づきの記録は写真と一体化した特徴点記述法が優れている


 また、ある写真の特徴点と他の特徴点との関係に親子関係や参照関係が見つかるかも知れない。かつて南方熊楠先生の研究はこのような地道の整理の上になし得た研究成果であった。今日のIT技術は、曖昧な推定だけで行うことだけでは不安があり、もっと確定的情報が必要であり、人の知識を少しだけでもイメージ図に加えておくだけで、新しい検索方法を開発できるのである。使う人の意図に合わせた検索結果が必要なのであり、それによってファイルサーバに眠ったダークデータを掘り起こして、新しい着眼点が発見できるようになる。もの書きをするクリエイタには最良な方式である。 

 また、ものを対象として撮影した場合、そのものからの気づきには、周囲にあるものや人など写っている絵とその位置関係から受け取るものもある。したがって、時刻の経過、年月の経過により、撮影した対象の変化もあるが、周囲の変化もあるものである。写真は対象のものを周囲のものや人の数や位置関係やその他の状況の組合せの結果として構成されており、その結果としての考えや気づきや感動などを作り出していることも多いのである。
 写真が工場内、店舗内、倉庫などの場合には、生産管理上の有益なデータとなる。それは、その写真に写っている物が、同時刻に同じ場所に存在したことを示していることになる。写真の中に何があるかが分かれば、それらが計画に対して、正しいのかどうかを判断できるようになる。

製品の検査工程での活用方法

 また、製品の検査は、まだまだ人による目視であることが多いが、検査にて写真を撮ることを併用すると、人の判断と写真の比較により、判断のミスが起こりやすい事例を蓄積できる。その対策により検査の信頼性を向上させることにもつながるはずだ。特徴点として事前に、確認すべきポイントをスマートグラスなどで、視野内に情報と目の前の物を重ねて見ることで、人の判断を支援するシステムも作ることができる。目で捉えた対象が人の思考の出発点であり、見た対象と考えたことを一体で蓄積することが既存の文書などのファイルを活用する方法であると考えている。

製造業の設備設計における承認図検討業務へのCKWEB2の利用例

承認図への特徴点記述法による意見の書き込み

設備の設計での利用方法について解説する。設備の設計を行う場合は、お客様から仕様書を受け取る。仕様書は、どこまで細部にわたって記載されているかはまちまちである。標準的な設備であれば型式や台数で良いだろう。しかし、設備を新たに設計製作する場合は、機能、ワークの大きさ、重量などの情報、機能の要求精度、加工のサイクルタイム、安全対策、価格、納期などが記載される。
 設備の設計を請負う企業は、この仕様書とワークの図面を受取る。相互での確認を必要とすることは、要求機能と精度である。これによって、設備の基本設計が異なってくるためである。これを確認するには、その設備での加工後の要求を、投入するワークの図に特徴点を記載して記述すれば良い。そこに作られた特徴点が要求である。その引き出し線の頭に書かれた要求精度にて、相互の企業は容易に確認することができる。イメージ図を加工後の図面を用いることで、仕様書、図面などの複数の紙による伝達のわずらしさから解放される。

メールによる承認図検討よりも優れている点


 今までメールで伝達が行われることが多いが、メールの本文と添付された図では、メールを書く人も、受け取る人もメールと添付の図を繰り返し見なければならない。或いは、図面を紙に印刷を行い、その図面に手書きでメールの本文にある要求と精度を追記することも行われるだろう。ならば、最初から図面に要求と精度を書いておき、それをIT技術で共有すれば簡単である。これが弊社のckweb2 システムの基本コンセプトである。
 図面に一体に記載された要求と精度については、相互に意見交換が行われる。遠距離や海外の場合はインターネットによる意見交換が必要となる。ものを見ながら、漏れなく確認し合うには、そのものが共有されていなければならない。
 現状のWeb会議にては、まだ、資料を見せることだけであり、その資料についての意見は、その場で消えてしまう音声である。時差のある場所、都合が合わない場合のコミュニケーションをどのようにスムーズに行うかを私は考えた。
 資料そのものに相互が直接意見を書き込めるようにしたのである。特徴点により意見のある場所(座標)を明確に指し示し、そこに内容を記載できるようになっている。まるで、時差会議のような機能である。

議事録の廃止と設備設計・製造知識の蓄積

 一旦、共有された図面と要求は、その中に変更を要する項目も出ることもある。その場合、リアルな会議では即答できずに、後日回答が行われる。これでの回答は、日程が遅くなるだけでなく、理解不足から、再確認を行いメールで回答することになる。このような些細な手間がストレスとなっている。メールの数も増え、図面も修正されたりで、管理する文書が増えていく。このような場合でも特徴点に要求内容や変更内容を登録するだけよく、議論の対象は、共有された1つのイメージ図であり、更に、その中に記載されていることが議事録そのものである。
 このような使い方で、納期や価格についても特徴点にて議論の調整を行なっていく。仕様書の合意が終えると、機械の設計図面を作成することになる。この設計図面も最初は構想図が取り交わされる。この構想図をイメージ図として特徴点を作成しながら、リモート時差会議を行えば良い。次に設備設計の承認図が交換される。 
 これについても、承認図をイメージ図としてckweb2 システムにて共有し、特徴点を作成し意見調整を行う。このように、相互に紙の文書でやり取りする仕事の生産性に比べて、複数の文書の見比べ、ファイルの探索、内容の理解し直し、経緯の確認など考えること以外に使っている多くの無駄な時間を無くすことができ、かつ、決まったことが完全に共有させるメリットがあるのである。このように設備の設計においても、その業務のやり取りが記録されるため、次回の仕様書作成や設備設計において、繰り返しの同じミスのが無いように遂行できる。
 設計を製作する企業が別な場合でも、設備の承認図と部品図と加工図をイメージ図として登録することでコミュニケーションがスムーズに行うことができるようになる。

製造業研究者の知識と問題点の記録の利用例

ビジュアルなイメージ図(構想図)にアイデアを記述する

先回の投稿では組織での用い方を紹介したが、今回は個人での技術の記録方式を説明する。知識の記録方式は研究者や小説家などのクリエータにも便利である。研究者のこの記録方式の使い方を説明する。研究テーマが決まっている場合は、そのテーマを想像しやすいイメージ図(写真)を用意して研究テーマの表紙とする。このイメージ図にどこでも良いので特徴点と引き出し線を描く。普通ならば、白色の用紙に向かって自分の考えをメモすると思う。私のやり方は、考えたことを後で検索しやすくするために、研究テーマを表すようなビジュアルな絵を用いて、その絵から発想を展開していくのである。このイメージ図は他者から見ても、その中に含まれていることが推察できるイメージ図を選択する。イメージ図の中にテキストで分類名を記入しておくことも明確化できて良い。
このように対象をビジュアルなイメージ図を用いる理由は、子供向けの図鑑のように記録することが、誰でもわかる方法だと考えているからである。子供向けの図鑑は、分類が大きな単位であり、細かな分類を用いていないのが良い。哺乳類の犬猫程度の絵なら、言葉や文字が分からなくても、絵と関係させてその特徴(例えば鳴き声)は記憶されているからである。

特徴点記録方式によってアイデアを膨らめる

 イメージ図に書き加えた特徴点に、自分の考えを書き込んでいく。考えが深くなっていく方向と、広がっていく方向の両方に、自由に発想し記載する。この部分はマインドマップのような方式である。異なる点は、記載する考えがひとつ1つにQPPモデルの区分が付与されることである。目的は何か、その実現のためにどのように考えることを決めたのか、決めた考えを目的を実現できるようにするためにどのように実行しているのかを、常に分類して思考を整理することが重要である。なぜなら、そのような考えが沸き起こった内面の意識はすぐに記憶から消えてしまうからである。
 考えを書き込んでいくと、イメージ図の特徴点(考えの出発した点)とは異なるアイデアが湧いてくる。その時は、この同じイメージ図の別な座標に新たな特徴点を作成し、思考を展開していくのである。したがって、1つのイメージ図の多くの特徴点を作成することが自由にできるのである。途中で別な特徴点からの考えと関係することが出現する。その場合には、その考えと参照関係の関係付けをするのである。

参照図を添付して、既存技術との相違を説明することが可能となる

 それぞれの考えには、いつもイメージ図や文書を参照登録できる。そして、そのイメージ図の中に添付することになった理由となる部分に、特徴点を作成して、考えとイメージ図の中の部分との参照関係の関係付けを行うのである。
このように研究者はテーマを表す1枚のイメージ図に対して、空間的に知識のネットワークを作成する。作成された知識ネットワークの中から、QPPモデルの重要な分岐点を特定し、研究テーマの主たるストーリー作りを行うことができるのである。そのストーリーを元に、分岐点でストーリーから外れた考え方の記録を、目次の1つとして全体構成を立案することができる。このような思考を紙のメモだけで行う場合は、関係付けの展開により、都度、机上でのメモ用紙のレイアウトとグループ分けのやり直し作業を繰り返すことになる。これは、思考ではなく、単なる膨大な無駄な作業である。したがって、知識の記録方式には、IT技術でも検索と検索結果後の操作性が非常に重要な機能である。

製品開発でのデザインレビューにおけるQPPモデルの活用方法

製品開発の企画書をQのモデルとして利用すること

製品開発の実務適用についての特徴点とQPPモデルの使い方を紹介をします。製品開発の企画段階では、製品を市場に出す狙いは何かが議論され方針が決定します。この段階では例えば製品企画書という文書が作成されることでしょう。この文書を作成する人は、まず、過去に作成された書式の企画書を読むことになる。参考にすることは漏れの無い仕事の基本だからだ。これの過去の企画書を対象と呼ぶ。この対象とした文書に変更すべき点に引出し線を引く。その引き出し線の頭に、変更したいの内容を記述する。これらを対象の文書に書き込んでいくのである。これで、1つの企画書のアイデアが生まれたことになる。ここで大事なことは、帳票の記入エリアの大きさ制限を気にしなく自由に書くことができることである。常に内容が重要である。見た目を意識すると自分にも他者にも理解しにくい不十分な説明になる。頭の使い方を見た目のことから離れて、考えることだけに集中するのである。

設計、生産、販売など多面的な意見を企画書に記入する

次に、既に過去の帳票にも表現されている区分を付与する。全体として企画書はQの区分である。そして帳票の中にはには、例えば記入欄ごとに、テーマ、背景、課題、市場動向、必要な機能、販売予測、価格設定、発売時期、などの書く欄がある。これらの項目にもQPPの区分を付与する。区分する時は目的、設計、実行段階のどこで守ることかで分けること。全て企画書を書いた部署の責任ではないという意識で行うこと。
この企画書のアイデアに対して、社内で議論されることになる。その議論は、テーマはもとより、記入欄の内容=つまり引き出し線の頭に記載された内容についての意見である。それらは、1つひとつの引き出し線の頭に、複数の意見があり、その意見に対して、更に複数の意見が出される。つまり1枚の過去の企画書に追記する形で、その後の議論は全てこの文書に記載することができるのである。今日、これらはIT技術を用いて、クラウド上にある、弊社株式会社デジタルコラボレーションズのckweb2 サーバに保存することができる。

自部署のアウトプット文書をモデルとして、設計の企画書と紐付けする


企画書の次にそれぞれの組織が業務を行うことになる。その時に、それぞれの組織の業務においてアウトプットする文書がある。今度はそれぞれの組織での過去の文書を対象とする。自組織の文書に新しい企画書の変更内容についての意見や注意点を引き出し線を書き、その頭に、内容を記述する。この時、企画書のアイデアに書かれている特徴点と自部書の記載した特徴点との間には参照関係を登録することを行う。

QPPモデルのベネフィット

これにより関係組織の考えに対して自部署の考えを関係づけて記録することができる。これらのことを繰り返すことで、文書が決定されていくプロセスにての考え方を記録することができる。最終決定したそれぞれの文書をサーバーに保管すればよく、その際に、過去の企画書と最終の企画書との関係に参照関係を登録する。このようにして、企画から設計、生産に関する自部署のアウトプット文書を作成しながら、考えたことを記録することができる。これにより、キーワード検索や文書のイメージをキーワードから検索表示し、同時に、文書作成途中の議論を繭の糸の如く、引き出すことができるのである。