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木曜メールマガジン
”原理からのDX”を語る
#004
1、改善はなぜ必要なのか。
2、改善ネタの発見の思考方法
3、なぜなぜが必要なケース
4、改善が上手く進まない理由
5、基礎的社員教育のあり方
6、改革へ向かう人材開発とは
今では、多くの企業人から改善という言葉を聞くことが普通になっています。
小職もトヨタに入社した時に、上司である課長から”仕事とは改善”なのだと言うことを教えられ、当時はポカンとしていたことを思い出します。
仕事とは例えば、設計すること、制御を考えること、それぞれの専門部署で行うことが仕事だと思っていたからです。
しかし、長年トヨタで働くと、実は仕事とは改善することそのものなのだと良くわかっていきます。
つまり、どのような専門技術や事務の仕事でも、その中には、山のような問題が常にあり、その問題に気づき、一歩一歩、もっとうまく仕事が進めるように改善することに頭を使い時間をさいているからです。
なんだ、たかが改善で何が進歩するものかとおっしゃる方には分からないと思います。改善の一つもできない人が、いきなり改革だの革新だの発言しても何も成果は出ないのです。
改善の苦しみを知り、継続をしている企業だから、改革や革新ができる組織体質に会社のレベルが到達していくのだと思います。
では、改善が進まないと思っている方に、その理由をお話します。
1、人の問題
①経験の長さの違い
・昔は先輩が後輩にじっくりと現場を前にして現地現物で安全や品質、生産性についてOJTで育成していました。
どこまで、教えてきれているかはその進度も確認することができていました。
・今は、座学で(含むオンライン研修)、自分の理解力の上で、学んでいるだけの教育が多過ぎます。
・インターネットの情報を読むだけで十分だと思っている方もいるようです。
・例えば、安全問題に直面し、実際にケガ人が出てしまったという体験から得られる自分の仕事への考えの甘さ、足りなさを痛感し、どのようにすれば、今後、同じような問題が出ないかを何ヶ月も考え続けたという経験をいくつ持っていますか?
・最近では転職者も多くなる中で、組織の中は、経験の幅や深さが大きく差がある人で構成されています。特に製造業では、それぞれ多くの専門分野があり、それぞれの組織がこれまでの知識を受け継いで仕事を進める必要があります。
・チームで問題を改善しようとする時、このような経験差が問題の認識をする時点で不一致になることが多いのではないでしょうか?
それは、その物事の重大性、緊急性、拡大傾向などから優先順序が不揃いとなってしまっているからです。
優先順序の決め方をルール化すべきです。
②相手の意見を聞く姿勢の問題
・そもそも、人の話を聴かない方もいます。それは、もう、どうしようもないことです。
元々、生まれながらにして、こんな人はいないはずです。
実は、このような人は、これまでの経験の中で、そのような感性に育てられてきたのだと思います。
・自分の意見が採用されなければ、納得できずいる主張の強い人もいれば、全く興味も関心も持たない意思や意見の不明確な人、ただ、工数がないとか、最初から反対するだけの人もいます。
ビジネスマンであるならば、まずは人の話を聞く姿勢を養う必要があります。この訓練には対面による集団での議論の場を作り、他の人と、自分がどれほど姿勢に差があり、それによって、自分や他者にどんな影響を与えてしまうのかを体験させる必要があります。
・このようなことは学生時代で、当たり前のこととして身に付けている必要があります。社会に出て、お金や昇格ということと関係する中であっても、人の意見を聞くことは当然のことだと思います。そのくらいに、熱の入った議論を尽くすことが必要ですね。簡単に結論をしてはいけません。
③思考力の違い
・思考力の低さは、かなり重症です。しかし、思考力が不足しているなと気づくことが難しいことも事実です。
思考力が足りないぞと部下に叱責しても、そう簡単に期待したものを持ってくることは少ないものです。
・この思考力を身につけるには、目的と手段を常に区別して人の話を聞くことが良いと思います。
この前の選挙運動にても、手段ばかりを掲げている政治家が多く見られました。突然として掲げている根拠の説明のないテーマでは、そもそも争点にはなりません。
物事を決める考えを議論するには、背景の説明が重要です。その背景の合意ができてから、初めて何をすべきかを語って欲しいものと思いました。
・目的の目的を上位概念として考えながら、手段の手段を現場まで繋いで説明し、思考の差を整えながら、進めることが必要です。
④上司の能力の問題
・改善活動における上司の役割は重要です。これまで述べてきましたように、チームを構成する人の経験差、協力精神、性格、思考力の差をマネージメントとして改善する必要があるからです。
・上司が、これらの差をジャッチして軌道修正を図りながら進める必要があります。改善では、なぜ、その改善が必要なのか?言い換えれば、なぜそれが問題なのかを共通の認識にする必要があります。
・このスタートを間違えていると、そもそも、この改善活動はどのような問題が背景にあったのか、本当に忙しい時に時間をかけて集まる価値があるのか、という基本的な疑問に戻ってしまうことが多くあるからです。
・問題が明確になれば、対策はできたと言えるくらいです。
・上司は、先回りし、答えを持ってチームの方向をチェックし、アドバイスする大変さから逃避せずに、議論に参加する強さが必要です。ただし、上司判断で皆の意見を決めることは失敗することになります。チームの皆がやり切った、成果が出たと協力のありがたさを感じる必要があるからです。そうでなければ、改善は継続しないでしょう。つまり、仕事は進化しないことになります。
3、組織の問題
①自組織と他組織の利害
・これはいつも発生する問題です。このことを解決するには、その改善はどのような問題を解決することであるか。そして、その問題は会社の上位方針とどのように強く関係しているかをお互いが認識しあっていることが必要です。
・思いつきの改善テーマでは、組織間の対立で簡単に崩壊していきます。上司やリーダが、これらの利害関係者をうまく説得できるストーリーを作る必要があります。今の時代、体で当たって砕けろのようなスタイルでは人も組織も動きません。
・改善したいと思う自組織が、発言力が弱いこともあります。そのような時には、親しい発言力のある組織に協力をしてもらうことが必要です。
・企業には多くの組織があります。しかし、組織と組織は人間で繋がっていて、今流のITシステムで繋がっていることは少ないのではないでしょうか。これは製造業という創造的な業務を行い、あるいは創作的な業務が中心となっているためで、仮にITシステムが完成している部分は、昔から簡単な業務であるからゆえにIT化されていると考えるべきでしょう。
ですから、製造業の組織間は人間系が処理しているので無駄ばかりであると推察されます。ゆえに、多くの改善点があり、それらの改善点は、何らかの因果関係で繋がっていることから協力を求めることができるはずです。
②問題の緊急性の理解不一致
・解決したい改善点は本当に今すぐ手を打つべきかどうかで悩むこともあります。このような時は、優先度を決める方法として、
要素を重要度(あるべき姿の達成に貢献できる程度の大小)、緊急度(すぐに手を打たないと重大な結果、危機、危険を招く程度の大小)、拡大傾向(この問題を放置しておくと、その影響や程度はどのくらい大きくなるか)といった、3つの指標で決めることができます。
・会社や組織は限られた人数しかいません。定常業務を行いながら、改善を進めることはその分だけ工数が取られ負担が増えます。
余分なことに時間を割きたくないのはみんな同じです。働き方改革が進められてきましたが、その改革は本当に、緊急性の高いことでありましたか?疑問符のある取り組み事例がインターネットに掲載されるたびに残念なことだと思っています。
・日本の労働生産性が低いと認識するならば、ホワイトカラーの意味のないIT化や残業規制の締め付けなどの政策の前に、生産性の低い思考方法やルールや判断ロジックの曖昧性に踏み込んで改善することが先ではないでしょうか?
③組織に宿る風土の問題
・伝統的に長く存続している組織であるほど、古いしがらみやおかしなルールが染み付いているものです。
・製造業では、設計と生産技術、生産技術と製造、生産管理と製造の関係はいつも問題が出ます。
・それらの組織間の関係は、自部署の仕事に良くない影響を与える関係であるからです。
・良くない関係を続けていても改善は進みません。思い切って、良くない理由を両者で取り上げて改善することを勧めます。
・昔、おたくの上司がこんなことを発言したなどというしがらみや怨念を捨て、今、一番合理的である単純化したプロセスと判断ルールを生み出すことが大切です。
2、推進体制の問題
①改善を活性化する取り組み不足
・改善は良い結果に至るまで継続されなければならない活動です。活動を行っているチームは粘り強く進めて行く必要がありますが、その推進をフォローする組織が必要です。それは、各組織毎に準備するものではなく、会社全体として設ける必要があります。
・改善に手をつけ始めると、そこに無関心になり、活動が停滞しても知らないつもりでいる管理者もいます。改善よりも自組織の定常業務を先にと言いたいのでしょうね。これでは改善は進みません。このような推進のハードルをいかに工夫して乗り越えるかが管理者の役割ではないかと思います。それこそマネージメントの改善です。
②改善の目的と恩恵
・改善の目的は生産性向上です。いろいろな分野の改善がありますが、それは生産性向上です。人には時間という制限があります。限られた時間の中で成果を出す生産性向上が目的です。
・生産性向上は私たちの働き方改革に通じるもので、その結果は継続的に将来まで、恩恵を生み出すことができると思います。一過性の取り組みにしないことです。
③結局は改善しかないという解釈
・今年もパリでのオリンピックがありました。アスリートの人達は、4年後のオリンピックを目標にすでにスタートしています。
・一方、企業で働くホワイトカラーの人達は目標を持っているでしょうか?あるタイムに到達しなければオリンピックに参加でないというレベルの目標をお持ちでしょうか?
・企業のホワイトカラーは考えることを仕事にしていますが、属人的であることは否定できないと思います。この属人的であることが生み出す成果は、本当に価値のある正しい生産的な結果を産んでいるのでしょうか?
・このような問いに、改革だ、革新をというのは簡単ですが、何をどうすれば、改革できるのかを真剣に考えていますか?
・DXと叫んでも、商売したいIT企業が動くだけで、ITの前に日本の製造業はもっと考えること、業務の進め方、など多くの仕事の整理というやるべきことがたくさんあります。それをIT企業に任せていても何も進みません。
・先を見て、今できることを一歩ずつ進める見通す力を持った人が、今、何をすべきかを発見できると思います。そのきっかけになるためにも、毎日改善という仕事を進めることが良いと思います。
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