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【製造業の改善と革新の会】

木曜メールマガジン

”原理からのDX”を語る

元トヨタ業務改革室長

#005

10月のテーマ
【改善の必要性】

今では、製造業だけではなくあらゆる仕事の中で用いられるKAIZEN 改善の基本的な価値についてです。

今後の配信予定

1、改善はなぜ必要なのか。

2、改善ネタの発見の思考方法

3、なぜなぜが必要なケース

4、改善が上手く進まない理由

5、基礎的社員教育のあり方  今回

6、改革へ向かう人材開発とは

【基礎的社員教育のあり方】

労働力の更なる流動化を発する方もいます。驚くことに新入社員の3割が1年で転職している事実もあります。このような状況は本当に日本にとって良いことなのでしょうか?働く仕組みから終始雇用が薄れ、会社への帰属意識が曖昧であることは良いこととは言えないのではないでしょうか?ならば、もっと日本的な価値観に沿った自らのルールを考え出す必要がありそうです。どうも日本の経営者は欧米追随の姿勢が強く、これまでの日本の良い方式をより良い方向に持っていく意識が低いのではないだろうか?

この点で、社員の教育について考えていることを述べてみたい。まずは、次のことを知ってもらう必要があります。

①人は考え方が違う、考えが異なるーー理想的には一人が一番効率的

・製造業ではその専門性が多岐にわたるために、一部署で10年以上配置される人も多くいます。小職も24年間、一部署にとどめられておりました。仕事のカテゴリーは大きく変わっていましたが、企画の仕事に従事していました。

 特に企画の仕事を任されると、一人で考えることがどうしても多くなるように思います。

・最初の企画は、将来の生産ラインのあり方を考えよというテーマでした。入社5年だったと思ういます。大きなテーマで、スタートは10名で構成されたチームでした。当然、小職は一番若く下っぱでした。この議論を聞いていると、年輩の人の経験話に誘導されたり、細かな話に終始し。大きなテーマに到達しそうもない議論が続いたこともありました。そして、最後に必ず、議事録は小職が担当することになりました。

・この時から、年齢、経験分野、育ち方の違いから、一人ひとりのその後の考え方、方向性、情熱に違いが出てくるものだと思っていました。チームの中は年齢順の役職階層で、今のようなフラット(形式的であるが)ではなく、先輩たちが発した調査対象などは、いつの間にか全てを自分一人が行うことになっていきました。各メンバーは自分の定常業務を重視し、この企画に対しては、会議に参加する程度の認識しかなかったようでした。

・結局、最後のまとめの文書作成は、課長と担当者の2人だけで、もちろん手を動かし、鉛筆と消しゴムで書類を何回も書き直す作業は小職がやるしかありませんでした。こんなことを経験すると、リーダは何をすべきか、メンバーはどのような意識を持つべきかなど多いに苦悩したものです。

・一人で考え抜いてやるしかないと思うことで、何とか結果を出すことができたのですが、会社の組織の中での人の心の持ちようによって、大きく組織の成果は違ってくるものだと若いながら痛感したものです。幸いなことに、当時は残業は認められ、納期に対して必要な時間は認定されていたために、残業規制と納期厳守という難しいことに限界を感じるには至らなかったのでした。

・ここまでは、読者の皆さんに、こんな経験の元で、社員教育を考えていることをご理解いただく背景です。


②組織(会社)の中での人の育成の基礎

・そもそも、マナーのない方を改めて教育するのが育成ではありません。そのようなことは学生の間で身につけておくべき事です。当たり前の身だしなみ、言葉遣い、周囲の同僚への配慮などはお互いに指摘し合えば良いのだと思います。このようなことをパワハラだと言う言葉によってバッシングすることはおかしなことだと思います。言われた方はありがたく思えば良い関係が維持できるはずなのにです。日本人の言葉は、繊細なことを一言で表現することができ、英語のように新概念を作らないといけない局面は少ないはずだと思います。大雑把な新概念を英語で伝わってきても、それを日本語で会話することが大切だと思います。バズワードと言われることも多くあり、その解釈のために日本が揺さぶられることは本当に生産性を低下させていると思います。

・大切な教育は、会社の一員であることの自覚と責任について、どのように日常の業務に取り組んでいくべきかを理解させることだと思います。会社の一員であることの精神基盤を教育することだと思います。

・そして、この精神基盤に則り、実務を数多く重ね、必要なことを自ら学んでゆく姿勢が必要です。これが、将来の自分の市場価値を作り上げることになると思います。資格ではなく実践的経験が重要です。この実践経験の中で思うことを企業の精神基盤に照らして考える等の具体的なことを経て、初めて抽象的なことを学ぶことができるからです。

③社員に一番大切な姿勢とは

・それは協力の精神です。極端な話ですが、社長一人で運営するものづくり企業を想像してみると良いと思います。例えは伝統品を手作りする会社、一人で和菓子を作り販売する社長です。営業から製造まで全て一人です。これは、製造業にあるすべての機能を社長が一人で行うために、他者との合意などの時間は必要がなくなります。どんなに良い製品ができるかは別にして、意思決定の効率性は100%です。この一人社長を最大値にして、社員数が増えれば増えるほど意思決定の効率は低下していくものです。その低下する効率をいかに少なくするかに会社は苦労していると思います。

・この意思決定の効率アップには、社員一人ひとりが協力し合う精神が必要です。私たちの殆どの仕事は、ここの問題により多くの損失をしているのです。折角良いアイデアも、お互いにこの精神で繋がっていないことにより没になることを多く経験してきました。協力ができない人達の組織やチームでは、何も進まない、進めようとする前向きな人達のマインドを低下させていくことになります。

・この時、チームのリーダの素質も重要です。チームのみんなが協力できるように仕向けて行かなけばいけません。そのことだけでも疲れてしまうリーダもいます。人は集団になれるには、そこに協力の精神が存在する必要があります。協力の精神は、学校では教えられていますが、企業のビジネスに関しての協力とはどんなことを言うと思いますか?

・それは、会社の基本的な精神基盤に基づく、企画、業務などがその目的や価値感にて一致した気持ちになれると言うことで協力ができることになります。しかし、精神基盤に基づかずに、突然と生まれた仕事について、その背景が理解できず反対されることが多くあります。このことを捉えて協力的でない関係に固定化されてしまうこともあります。

④協力の精神を育成する方法

・改善活動は協力精神が必要な活動です。成果のない改善ごっこになっていないでしょうか?協力という心のマインドは口で言うほど簡単には醸成されません。鬼軍曹がいて、大きな声で命令するしかないのでしょうか?そのようなことをするとパワハラと糾弾されるかも知れません。パワハラという言葉が流行らなければ、そのような叱責において、説明を加えて慰めてくれる上司や同僚もいるはずです。パワハラと言うことに対し、怖れてパワハラではなく、それは会社の命令だとはっきり言えば良いだけです。

・協力のマインドを醸成するには、同じ目的のことを一緒に行うことだと思います。この目的の理解とその対策合意をするには、相手に理解できる論理を組み立てる必要があります。人は皆、経験も違い、異なる考え方や育ち方をしているものだと思うことです。この認識に立てば、相手にわかりやすく伝達することがいかに重要であるか納得できると思います。単なるコミュニケーションではなく、経験差や知識差を補う議論の進め方が必要であると思います。

・これらの方法論を実施しているのがトヨタの2つの人材育成教育です。一つはトヨタ生産方式という精神基盤、2つ目が、改善に用いる問題解決法になります。この2つの人材育成教育は、どのような企業にも用いることができるので、その方法を真似されれば良いと思います。


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改革へ向かう人材開発とはお話しします。

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