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【製造業の改善と革新の会】

木曜メールマガジン

”原理からのDX”を語る

元トヨタ業務改革室長

#009

今月のテーマ
【過去トラの活用法】

今では、製造業であらゆる仕事の中で用いられる過去トラの利用価値についてのお話です。

今後の配信予定

 

     1、過去トラとは、   

2、対策の重要性、

3、対策は誰がすべきか、今回配信

4、エンジニアリングへの活用、

5、現場での利用

6,生産技術での利用、

7、,製品開発での利用

 

【過去トラ対策対策は誰がすべきか】

過去に起こった問題は、特に製造業では過去トラと呼ばれています。過去トラとは過去のトラブルのことで、一般的には過去のトラブルを参考にすることで、同じような問題を再発させないようにしたいと考えています。

しかし、このように過去トラを使い切れている企業はそれほど多くないことが分かっています。過去トラはどのように扱われていますか?と質問すると、サーバーにトラブルの報告書が保管してあります。或いは、トラブルが発生した際には、速やかに社長以下の幹部社員や課長まで一斉メールで伝達していますとの返事が返ってきます。

では、過去トラの内容として、どのようなことが書かれていますか?そして、対策や結果まで記録されていますか?とお聞きすると、実は、その点については十分フォローできていないとのお答えがよく聞かれます。

このようなことがないように、どのように過去トラブルを扱い、活用すると良いのかについて、具体的に解説をしていきます。

今回、過去トラ対策は誰がすべきか?について考えてみることにしました。

1、問題発見者が対策する

 問題を発見した人が問題発生の状況やその推定理由と対策の方向性等を記述し、問題として社内に向けて共有するやり方。1番目の窓口を果たすだけの役割です。

この場合、問題発見者は対策部署まで明確化することなく、問題だけ提起するので、対策が実行されるまでの主体性を持たない。このやり方では問題は解決できないことが多い。社内の各組織が敏感に反応することを期待しているので、自部署が原因なのではないかという人が多い場合にはアクションが期待できる。

しかし、実際には問題解決の仕事は後回しになる仕事であるため、関心は継続せず、放置されることが多い。品質問題は社長にもメールで発生時に配信しているという企業もありましたが、その後の対策実行には効果を出していないばかりか、品質問題の発生件数すら掌握していない品質保証部がありました。

発生した問題は自分が解決するのだという基本姿勢は大切であり、他組織への協力依頼においても、自身が積極的に行うことをする必要があります。誰かがやってくれるだろうという意識では、問題解決どころが、日常業務も無駄が多いと思います。

 また、安全週間だといって、問題を提起しなさいとの掛け声に対する行動だけでは、安全対策は進んでいきません。日常の行動や作業や環境に厳しい目を向け観察を繰り返さないと隠れた問題は見つけることができないものです。見ようと思う意識が必要で、ぼんやりと眺めていては何も発見できないと思います。

SQCDの向上は全員参加型で行うべきで、全員が問題解決者として行動すべきです。

 

2、問題発見部署が経験から推定した部署に対策を要請する

  多くの企業はこのやり方になっています。これは問題発見者の上司も確認した上で、対策部署を指定することになるので、対策部署への対策要求を強く感じて受け取られる事になります。2番目の窓口を果たす役割です。

しかし、対策部署に対して、問題解決の進度をフォローする必要があり、フォローの仕組みが必要です。

フォローの仕組みがない企業が多いと感じています。例えば、社内の各部署が生産ラインでどのような問題が発生しているかに関心を持っていなければ、フォローも甘くなり、設計からは、生産ラインでの問題として優先度が低く取り扱われてしまいます。そのためには、もっと強力な進捗フォローの仕組みが必要であり、生産ラインの問題が離れた間接部門に届いて重要性を共有させることができているかを注視する機能があることです。

この場合、なぜ問題を管理し、進捗まで共有する必要があるのかという目的を社内で共有していなければ、うまく機能しなくなります。プロジェクト単位でその製品開発から生産までの諸問題がどれだけあり、製品立ち上げがスムーズに行えるかどうかのプロセスをチェックする目的とするのが一般的です。問題が提起部署ごとにファイルされているだけでは、問題と他部署の問題や意見との不一致が顕在化しないため、解決に伴う問題を発見することもできなくなってしまいます。一つの問題を解決できるためには、対策に関係して発生するであろう別な問題を未然に認識しあって対策を進めることができているかに注意すべきです。

3、問題解決フォロー組織を作り進捗管理を行う

  これは、滞りがりな問題の対策をチェックし、進度をフォローする役割の組織をもつことです。問題の解決を要求された対策部署をフォローし、社内の問題解決の実務が澱みなく進んでいるかを確認し、社内に進度を公開することで、より一層の努力を促す方法です。

ところが、自部署で発生した問題を提起しなくなる可能性があります。自部署の問題は自部署で解決すべきこともあり、その解決までフォローされる事になるからです。

本来の目的を認識し合えばナンセンスな行為ですが、社内の各部署の問題解決進度が公開されると、その管理者は少しでも良い解決率にしたいとの気持ちが生まれるものです。

その結果、問題を提起することが減る可能性があり、問題の質的な面を評価することも必要だと思います。

SQCDが毎月どの程度向上しているかを対策効果として公開するなどを行うと良いと思います。

問題の数の多少や解決進度の大小は目的ではなく、途中の評価メジャーでしかありません。製造業の活動は常にSQCDの推移で見る必要があり、その向上のために、問題を発見し対策を実行する能力が大切となります。弊社が行う問題解決講座は、一人でも多くの社員がその解決スキルを身につけることで、問題解決の適切さとスピードを得ることができるようにと行っているものです。

4、問題解決専門組織を作り対策推進の実務を行う

  これは解決専門の組織を作り対策までの責任を持たせるやり方です。問題解決には専門知識を持つベテランが必要になり、解決策が問題発見者の意図、希望と一致させることができるか疑問があります。その守備範囲もSQCD全体であり、会社の組織の全てについての対策推進となれば、現場を経験した識者が担当する必要があリます。しかし、対策の実行そのものは実務実行部署が行う必要があります。なぜかというと責任の所在がありまいになってしまうからです。従って、対策案とその決定ステップまでがこの専門組織の範囲となります。もちろん、この検討や決定は問題解決専門組織と実務実行部署が意見調整して進めていきます。

 大企業(社員数千人以上)の場合には加工分野も幅広く、専門的な組織も多くなるため、オールマイティな問題解決者はなかなか見当たらないと思います。

すると、問題解決専門組織でも対策案を考えること自体も難しいのではと思います。

結局、この4までの専門組織化にはせずに、3の問題解決フォロー組織を持つことが一番効率的な運営になると考えています。

次回のテーマ
【エンジニアリングへの活用】

最後まで購読いただきましてありがとうございます。

過去トラのエンジニアリングへの活用お話しします。

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